【事業承継】親族内承継~息子に事業を承継して欲しい場合~
2022/05/18
目次
【親族内承継とは】
親族内承継とは、「親族」という言葉とおり、現在の経営者の子ども、娘婿、といった親族に事業をバトンタッチすることです。
「親族」という言葉は、法律用語で、正確には、「6親等内の血族、配偶者,3親等内の姻族」(民法725条)を指します。「親等」というのは、いわば親族関係の距離を表す単位で、「姻族」とは配偶者の血族のことです。上記の「親族」の範囲には、子や孫、兄弟姉妹、子や孫の配偶者、兄弟姉妹の配偶者等も含まれます。
しかし、事業承継の場面で使われる「親族」は、上記のように、厳密な意味ではなく「子どもや身内」くらいの意味で使われているのが一般的です。これは、事業承継の場面で、厳密に「親族性」を区別することには余り意味はなく、むしろ、「相続人である親族」と「相続人でない親族」、あるいは相続人の中でも相続分に違いがある場合の区別の方が問題になってくるためです。
そして、「親族内承継」は、減少傾向にありますが、やはり日本ではもっとも馴染みの深い方法と言えるでしょう。なお、ここでの経営とは、株式会社の経営を前提としてお話させていただきます。
【親族内承継の方法と特徴を理解しよう】
●「親族内承継」の特徴
親族内承継のメリットやデメリットについて簡単に説明します。
親族内承継のメリットは、現在の経営者に近しい者が引き継ぐことになりますので、社内外の関係者から、後継者として理解を得やすい方法と言えます。また、経営者、すなわち代表取締役社長という地位とともに、自社の株式を引き継がせることもできますので、所有と経営が分離しにくい方法と言えます。
他方デメリットとしては、次の2点があげられます。
①親族内に、後継者となる意思、その資質を有する人物がいない場合があること
②後継者一人に経営を集中させるにあたり、親族間の対立を招きやすい
●親族内承継の方法にはどのようなものがあるか?
親族へ承継させるには、①相続による承継、②生前贈与による承継、③その他の承継が考えられます。①、②について以下見てみます。
①「相続による承継」とは、現経営者の死亡のときに、相続として、後継者への承継が行われる方法です。現経営者における遺言書の作成等の対策が必要になりますが、売買等による承継等の場合に比較して、株式の取得または、事業用資産の取得のための資金の準備が少なく済むという利点があります。
②「生前贈与による承継」とは、現経営者の生前に、後継者に株式等を贈与することで、後継者への承継が行われる方法です。生前贈与の場合は、後継者が早期の段階で経営判断に加わることができるようになりますし、作成者が自由に撤回することができてしまう遺言と比べて、後継者の地位が安定するという点に利点があります。
現状、長男などに後継者が定まれば、生前の段階で、株式を贈与していく経営者が多く見られます。
【方法を知った上で家族での話し合いをしよう!承継のタイミングも大事!】
親族内承継には、上記のような方法がありますが、どの方法によるにしてもいきなり後継者になることは望ましくありません。もちろん業種によりけりではありますが、どのような業種でも経営者になるためには、一般的には5年程度は修行が必要と言われています。古参の従業員との人間関係も構築する必要があります。
相続や生前贈与といった方法を踏まえ、準備期間も必要な点を前提に、親族と協議してください。特に親族への生前贈与の方法が合わせて取られることが多いですが、もし親族が十分に自社の経営について引き継ぐ意思が感じられないのであれば、従業員承継等も考えていかざるを得ません。長男に代表取締役としての地位(経営)と株式の一部を譲った途端、その会社の事業の一つ(生産性が上がっていた、その会社にとって重要な事業)を、やる気がなくなって止めてしまい、長男と、株主である前社長(父親)・他の子どもとの間で法的紛争になった事例もあります。
誰に経営を譲渡するかは、充分に見極める必要があります。特に、生前贈与を行う場合には、遺言のように自由な撤回ができるわけではありません。ですので、後継者のやる気・適性を見極めて、どのタイミングでどの程度の株式を譲渡するのかという点も話す必要があります。
この記事は事業承継を考えている人、又は事業承継の対策を考えている人のために、参考になればと書かれています。事業承継について、ご質問、ご相談があれば、お気軽に「事業承継について教えて欲しい」とご連絡ください。「事業承継」のアドバイザーがお答えします。あなたの大切な「事業承継」をより良き「事業承継」にしていただくために、事業承継のアドバイスさせていただきます!