【相続】公正証書遺言の作成方法
2021/07/12
目次
【公正証書遺言とは】
公正証書遺言とは、遺言者が伝えた遺言の内容を、公証人が公正証書の形式によって書面化する方式の遺言をいいます。公正証書遺言の作成に関与する公証人は、公証役場に配置される公務員で、裁判官や検察官の経験者などから法務大臣が任命します。そして、公証人が作成する公正証書は、個人の権利義務などに関する信用力の高い公文書であるため、公正証書の形式で作成される公正証書遺言は、後から遺言の効力をめぐる紛争が生じにくいという特徴を持ちます。
作成された公正証書遺言は、公証役場で保管されますので、第三者が遺言内容に改変を加える恐れはほとんどありません。さらに、自筆証書遺言とは異なり、公証人が遺言書を作成するため、遺言書の全文を自書することが困難な人であっても、公正証書遺言であれば作成できるという大きなメリットがあります。
【どのように作成するのか】
公正証書遺言を作成する手順は、まず2名以上の証人が立ち合いの下で、遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝えます。これを口授と言います。次に公証人は口頭で伝え聞いた内容について、筆記により書面を起こし、遺言書と証人に対し、筆記した内容の読み聞かせや閲覧を行います。
そして、内容に不備がないことを確認した遺言者と証人が、書面に署名押印を行います。最後に、公証人が正しい方式に従って公正証書遺言を作成したことを添え書きした上で、公証人が署名押印することによって、公正証書遺言が成立します。作成された公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。
その他に、原本とまったく同じ内容の書面として公証人が作成した謄本と、原本と同様の効力を持つ正本(遺言者や証人の署名押印が省略されています)が遺言者や遺言執行者に交付されます。つまり、公正証書遺言は合計3通作成されます。
【公正証書遺言作成のための必要書類】
公正証書遺言の作成を公証人に依頼するにあたり、事前に遺言者が用意しておくべきいくつかの必要書類があります。
・遺言者や相続人に関する必要書類
遺言者が自らの考えに基づき、公正証書遺言を作成することを確認するために、市区町村役場において遺言者の印鑑証明書(印鑑登録証明書)を発行してもらう必要があります。
相続人に自分の相続財産を遺すという内容の遺言にする場合は、その相続人に関する戸籍謄本が必要です。これは相続人の続柄を確認するための資料ですので、相続人が自分の配偶者や子であれば、市区町村役場において遺言者の戸籍謄本を取得するだけで足ります。
しかし、代襲相続によって遺言者のおい・めい(遺言者の兄弟姉妹の子)が相続人になることもあります。この場合、遺言者の戸籍謄本からおい・めいの続柄を確認できませんので、これを確認するために遺言者の戸籍謄本とは別途・おい・めいの戸籍謄本が必要です。
これに対し、相続人以外の人に自分の相続財産を遺すという内容の遺言にする場合は、その人の住民票の写しなど、氏名・住所・生年月日が明らかになる書類が必要です。なお、印鑑証明書、戸籍謄本、住民票の写しは、発行日から3カ月以内のものでなければ使用できませんので、有効期限に注意しなければなりません。
・相続財産に関する必要書類
とくに相続財産が不動産の場合は、不動産の所在や地番を特定する必要があるため、法務局において、不動産の登記事項証明書の取得が必要です。その他、不動産の価値を把握するため、市区町村役場などにおいて、固定資産評価証明書などの発行を受けることも必要です。
・証人や遺言執行者に関する必要書類
公正証書遺言は、2名以上の証人の立会いが必要です。未成年者、推定相続人(被相続人の死亡時に相続人になる人のこと)、受遺者、推定相続人や受遺者の配偶者もしくは直系血族などは、証人になる資格がありません。そこで、証人になる人の氏名・住所・生年月日・職業などがわかる資料を提出します。
【口授に関して】
公正証書遺言を作成する場合、本来であれば前述した手順に従うことが必要です。しかし、実際には口授に先立って、遺言者が公証人に対し、遺言の大体の内容を記したメモ書きなどを手渡し、それに基づいて公証人が事前に公正証書遺言を作成し、当日は遺言内容と一致しているのかを確認する意味で口授を受ける、という手順を踏んでいるケースが少なくありません。
この点については、全体として公正証書遺言の作成手順が守られている判断できれば、手順が入れ替わる形で作成された公正証書遺言も有効だと考えられています。
なお、口がきけない人については、公正証書遺言の最初の手順である「公証人への口授」が困難だと言えます。しかし、手話などによる通訳や本人の自書によって、公証人に遺言の内容を伝えることができれば、口授の代替手段として認めることができます。
【公正証書遺言を作成する際の手数料】
公正証書遺言は、公証人が遺言書を作成するため、公証役場において手数料の納付が必要です。手数料は相続財産の金額(評価額)に応じて異なりますが、相続財産が複数の場合は、それぞれの相続財産の金額に応じた手数料を合算します。注意しなければならないのは、相続財産の合計額が1億円以下の場合は、手数料の合計額に1万1000円の加算が必要になるという点です。(遺言加算といいます)。
この記事は相続を考えている人、又は相続の対策を考えている人のために、参考になればと書かれています。相続について、ご質問、ご相談があれば、お気軽に「相続について教えて欲しい」とご連絡ください。「相続」のアドバイザーがお答えします。あなたの大切な「相続」をより良き「相続」にしていただくために、相続のアドバイスさせていただきます!
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