【相続】相続放棄をすると空き家はどうなるのか? ~相続放棄にも注意が必要~

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相続・終活マガジン

【相続】相続放棄をすると空き家はどうなるのか? ~相続放棄にも注意が必要~

2022/03/23

目次

    【相続放棄と空き家】

    亡くなった親が遺した実家を相続したにもかかわらず、適切な管理をせず廃墟化していく空き家の数が全国的に増加し、大きな社会問題となっています。築年数が経過し、再利用や売却のあてもなく、管理するにも、解体するにも費用が掛かってしまう・・・。

     

    それならば、相続した財産を所有する権利を一切放棄する法的な手続き(相続放棄)を検討している人も多いと思います。しかし、相続放棄は原則として相続開始から3カ月以内に申請をしなければならず、時間が限られた手続きでもあります。

     

    そして、実は単純に相続放棄をすれば、不動産を保有することによって生じてくる責任や問題がすべて無くなるというわけにはいかないのです。自分の実家は売却も可能だから、相続放棄は考えなくても大丈夫、そう思っていても思わぬところから、責任が降りかかってくることがあります。

     

    現行の民法では、先順位の相続人が相続放棄をした場合、不動産の相続権が巡り巡って自分のところに来てしまうという可能性があるのです。

    【相続放棄とは?】

    相続放棄とは、亡くなった親などが残した一切の財産を引き継がないことを言います。相続を放棄するには、親が死亡するなどの理由により、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」(民法第915条第1項)に、家庭裁判所に対して、「相続放棄申述書」と必要書類(戸籍謄本、住民票)を提出し、「相続放棄申述受理通知」を受けなければなりません。

     

    もし、何も手続きをしないまま3カ月が経過してしまうと、相続放棄の意思表示をしなかったということで、原則として、自動的に「単純承認」を選択したとされ、全ての財産を引き継ぐことになります。(3カ月以内に相続放棄を決められない場合は、相続放棄の申述期間の延長を申請することもできます)

     

    相続放棄の申請が受理されると、相続に一切関わることができなくなります。相続放棄は、プラスの財産(売却できる可能性のある不動産や預貯金など)よりも、マイナスの財産(負債や売掛金など)の方が上回る場合に、検討されることが多いでしょう。

    【相続人全員が不動産を放棄するとどうなるのか?】

    民法239条第2項では、「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」としています。つまり、不動産を相続する権利のある相続人(被相続人の子、親、兄弟姉妹)全員が、被相続人が所有していた実家などの不動産の相続を放棄すると、その不動産は国に承継されるのです。

     

    ただし、不動産を国庫に帰属させる手続きを行うには、弁護士や司法書士などの第3者を「相続財産管理人」とする申請を行い受理された後、その不動産に相続人がいないことを法律的に確定させなければなりません。

    【相続放棄をしても空き家の管理義務は無くならない】

    民法では、「相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」(民法940条)とされています。

     

    つまり、不動産の場合には、相続放棄をした後でも、次の引き継ぎ手が現れ、相続財産の管理を始められるようになるまで、相続放棄をした不動産の現状を維持するための財産管理をしなくてはならない、つまり「管理義務」がつきまとうのです。

     

    これは、相続放棄をしたら、財産管理は何もしなくても良いとなると、他の相続人や被相続人の債権者に不利益が生じる可能性があるからです。

    【相続放棄の管理義務は?】

    民法第940条に、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」と定められています。

     

    つまり、たとえ、相続放棄が成立して固定資産税の支払い義務がなくなったとしても、相続財産管理人が管理を開始するまでは、空き家の管理義務自体は所有者に残る可能性が大きいのです。そのため、万が一空き家を巡って周辺とトラブルが生じたり、賠償を要したりする事故が起きしまった場合は、その責任を負わなければならない可能性があります。

     

    このような状況を踏まえると、相続放棄をした人は、その後も空き家の管理について空家法上の努力義務を負いますし、第三者に対しても法的義務を負うという考え方も成り立つので、全く何の関係もなくなるということにはならないと考えられます。

    【自分だけの問題では終わらない】

    相続放棄は自分だけの問題で終わらないことにも注意が必要です。

     

    相続放棄をした人は、「初めから相続人とならなかったもの」となります。一般的に、第1順位の相続人(被相続人の子供等)が全員、相続放棄をすると、相続権は次の第2順位の相続人(被相続人の両親等の直系尊属)に移ります。これらの第2順位の相続人が、先に亡くなっていたり、全員、相続放棄をすると、その次の第3順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹等)へと相続権が移ります。そして、第3順位の相続人が全員、相続放棄をすると、次に相続する人が誰もいない(相続人の不存在)という状態になります。

     

    つまり、相続放棄をすると、その相続権は親の兄弟姉妹やその子へとまわりまわっていくわけです。逆に従兄妹が相続放棄した家の相続権が、自分にもまわってくることもあるわけです。

     

    ちなみに家庭裁判所や役場などから「先の順位の相続人が相続放棄したので、相続権があなたに回ってきました」といった通知をしてくれるわけではありません。

     

    実際に、先順位の相続人から相続放棄をしたことを知らされておらず、市町村の空き家担当から、突然、身に覚えのない不動産の相続人であることを知らされ愕然とする方も多いようです。この背景には、親子や兄弟姉妹の間で深い溝ができていたり、親戚といっても疎遠でお互いにの連絡先を知らないなど、昔に比べて家族の関係性が希薄化してきていることもあります。

     

    そのため、相続放棄をする人は、他の相続人にも亡くなった人の財産や債務の状況をきちんと知らせて、自分が相続放棄を選択したことやその理由を伝えて、他の相続人が正確な情報をもとに相続放棄をするかどうか決められるようにすることが重要になります。そうしないと、他の相続人は何も理解しないまま、被相続人の負債や不動産を引き継いでしまいかねません。

     

    なお、相続放棄の手続き期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」であるため、一般的には第2順位や第3順位の相続人は、先順位の相続人が相続放棄したと知った時から3カ月以内に自らの相続放棄の手続きをしなくてはいけなくなります。この点はぜひ覚えておきましょう。

     


    この記事は相続を考えている人、又は相続の対策を考えている人のために、参考になればと書かれています。相続について、ご質問、ご相談があれば、お気軽に「相続について教えて欲しい」とご連絡ください。「相続」のアドバイザーがお答えします。あなたの大切な「相続」をより良き「相続」にしていただくために、相続のアドバイスさせていただきます!

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