【相続】相続放棄をすると空き家はどうなるのか? ~相続放棄の限界~

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相続・終活マガジン

【相続】相続放棄をすると空き家はどうなるのか? ~相続放棄の限界~

2022/03/23

目次

    【相続財産管理人制度】

    相続人全員が相続放棄をして、引き継ぎ手がなくなった空き家や土地などの不動産に対する管理義務はどうなるのでしょうか。一般的に、相続財産管理人制度の利用を検討することになります。

     

    相続財産管理人制度とは、相続人が存在しているのかが分からない場合や、相続人の全員が相続放棄をした場合などに、家庭裁判所が選任した相続財産管理人(一般的には弁護士や司法書士等)が、どこかにいるかもしれない相続人を探した上で、相続財産の管理・精算を行い、最終的に残った財産があれば、国庫に帰属させる手続きを行う制度です。

     

    よく誤解されるのは、相続人全員が相続放棄をして、相続人が不存在となった場合には、空き家等の不動産は自動的に国のものになるということです。しかし、相続人が不存在となった場合には、利害関係人等が申立てを行い、相続財産管理人制度に則った一定の手続きを経なければ、相続財産は国家に帰属することはありません。

     

    また、相続財産に預貯金や金銭などがない、あるいは少ない場合には、相続財産の管理費用や相続財産管理人の報酬を支払うための資金を確保しておく必要があることから、申立人は家庭裁判所に納める予納金が必要になります。

     

    事案の状況によって異なりますが、一般的なケースでは、数十万~100万円程度が必要といわれています。予納金は、最終的に相続財産を処分し、相続財産の管理費用や相続財産管理人の報酬等を差し引いた後、残額があればその分が払い戻されますが、何も残らなければ返金されません。

     

    特に、相続財産に売却が困難な不動産が含まれている場合には、相続財産を処分できるまで相続財産管理人としての業務が長年にわたり続くことになり、相続財産の管理に必要な費用や相続財産管理人の報酬を追加で支払い続けなければいけなくなります。

    【相続財産管理人の役割】

    相続財産管理人とは、遺産を管理して遺産を清算して職務を行う人のことです。次のような役割を行います。

     

    ◆相続人を探す

    ◆受遺者への支払い

    ◆負債の支払い

    ◆内縁の妻などの「特別縁故者」への支払い

    ◆残った財産を国庫に帰属させる

    【相続財産管理人の選任申立てができる人】

    相続財産管理人は、家庭裁判所で選任してもらわなければなりません。家庭裁判所は、利害関係人、又は検察官の請求によって、相続財産管理人を選任します。

     

    利害関係人とは、相続財産の保全につき法律上の利益を有する者です。誰がこれにあたるかは必ずしも明らかではありませんが、幅広く解釈すべきと考えられています。それは、なるべく早く相続財産管理人を選任して、管理されていない状態を解消されるべきだからです。

     

    利害関係者としては以下の人が上げられます。

     

    ◆特別縁故者

    ◆相続債権者、受遺者(葬儀費用を立て替えた人等も該当)

    ◆後見等の本人の死亡時における後見人等

    ◆事務管理者(相続財産を事実上管理している者)

    ◆その他

    【相続財産管理人になれる人】

    相続財産管理人に資格は必要ありません。被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して、相続財産を管理するのに最も適任と認められる人が選ばれます。地域の弁護士が選ばれるケースが多数ですが、申立人が候補者を立てることも可能です。ただし、申立てを受けた家庭裁判所がこれに拘束されることはありません。

     

    最近では、申立人による財産管理人候補者の推薦を原則認めず、家庭裁判所があらかじめ選定した候補者の中から、事件ごとに適任者を選任する傾向が広まっています。

    【実際に相続放棄された空き家を自治体はどうする?】

    相続放棄をされて、荒廃した空き家が近隣に悪影響を及ぼしているとすると、「市町村がこうした空き家に対して、相続財産管理人の選任申立てをすればよいのでは?」という意見も出てきてもおかしくありません。市町村も最終的に空き家が荒廃し、特定空家化し、税金を投入して解体除去を行うことになります。市町村も利害関係人といえるのではないかということです。

     

    しかし、問題は経済的な面です。相続財産管理人を申し立てて、管理をしてもらうには予納金が必要です。通常は100万円程度と言われていますが、実務的には、各地の家庭裁判所の運用やその事案の状況によって異なっており、残された財産の中に金銭があったり、不動産を売却できる見込みがあったり、相続財産管理人候補者と調整がついている場合などは、その調整された金額になる可能性が高いとされています。

     

    市町村が相続放棄をされた空き家への対応策として相続財産管理人の申立てをしても、空き家や解体後の跡地が予納金を上回る金額で売却できない、買い手がつかない場合では、予納金のために公費を支出するだけというリスクがあります。結果、税金を投入することになるために、市民や議会への説明責任も発生します。つまり、相続放棄されて相続人が無い空き家だからというだけで、市町村が手当たり次第に相続財産管理人制度を利用することは困難であり、結局のところ、自治体ですら、その空き家が換金できる可能性がなければ、放置せざるを得ないわけです。

    【空き家で相続財産管理人制度を利用したとすると】

    相続財産管理人制度を利用し、相続財産管理人が財産管理をしてくれた場合はどうでしょうか。相続財産管理人は相続財産の精算が終わると残った財産を国庫に引き継ぐことになりますが、不動産の場合ですと、実は国はほとんど引き取ってくれません。

     

    その理由は、市町村と同じく、経済合理性に合わず、国も欲しくないからです。売れる不動産なら債権者が財産管理人選任請求をし、相続不動産を精算してしまいますし、そもそも売れる不動産なら被相続人売れる不動産なら被相続人に借金がなければ相続人が相続するはずです。そうなると、ほとんどの相続放棄の場合に残る不動産は売れない、国も欲しがらない不動産ならぬ負動産となります。

    【払い続ける相続財産管理人の報酬】

    相続財産の管理は精算が終わらない限り続きます。国庫が引き取らないということであれば、相続財産管理人の業務はいつまでも終了せず、選任申立てをした者は相続財産管理人報酬を払い続けることになります。そうなると、相続放棄をするよりも、普通に相続して維持費を支払った方が安く済んでしまうことも十分考えられます。

     

    むしろ、当初の段階で相続を選択し、赤字覚悟で売却できる先を決める方法もあります。建物解体費や測量費・仲介手数料などの経費が売却価格を下回るとしても、今後の管理責任を負わなくてもいいと考えれば、多少の赤字は覚悟できるかもしれません。

     

    もし相続放棄をしたら、自分で売却することすらできなくなってしまうので、(相続人でなくなるため)、本当に相続放棄をすべきか、良く考えてみることが大切です。

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