【事業承継】後継者候補は親族だけではない
2022/05/13
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【事業承継にはさまざまな選択肢がある】
中小企業の事業承継というと親から子へ、子から孫へといった親族内での承継が多数派ですが、事業の引継ぎ先は必ずしも親族だけではありません。自社の役員や従業員のほか、外部の第三者に事業を引継いでもらうケースも多くなってきています。
【承継先は「親族」、「従業員」、「第三者」の3パターンに分けられる】
家業という言葉に象徴されるように、事業承継といえば親族(特に子ども)への承継がもっともポピュラーです。その親族後継者に経営者としての資質が備わっていれば利害関係者の共感も得られやすいでしょう。その反面、後継者以外の親族とのバランスや、相続税、贈与税の納税資金の面で課題があるケースがあります。また、親族内に適任者がいないというケースもあります。
親族内に適任者がいない場合に、自社の役員や従業員の中から後継者にふさわしい人材を探すこともあります。自社の事業内容に精通しており、取引先との人間関係もできているため実務面での活躍は期待できるでしょう。経営権を完全に移譲するためには自社株式の大部分を後継者に保有させる必要がありますが、自社株式の買取り資金の調達が課題になるケースがあります。
また、経営者が銀行からの借入に個人保証(連帯保証)をしている場合には、一般的にはその個人保証も引き継ぐことになりますので、そこまでのリスクを負う覚悟があるのかという点も課題になります。
事業譲渡や自社株式の譲渡により、取引先や同業他社等に事業を承継してもらうケースもあります。既存の第三者と合流する形式になりますので、単に事業が継続されるだけではなく、買主側の企業とのシナジー効果が見込まれ、従前にはなかった新たな企業価値が生まれる可能性もあります。
また、現経営者にとっては引退後の生活資金を現金で早期に手に入れることができます。相談窓口には、国の運営する「事業引継ぎ支援センター」の他、民間のM&A仲介会社等も多くあるため、自社の状況に合わせた相談・依頼先を選定しましょう。また、引継ぎ先の候補が見つかった場合には、具体的にいくらで事業(または自社株式)を売買するのかを決める必要がありますが、その際は公認会計士等の専門家に企業価値の評価を依頼することになります。
【従業員や第三者への承継が増加している!】
後継者不足を背景に、近年では親族内での事業承継の割合が減少してきており、反対に従業員や第三者への承継が増加してきています。みずほ総合研究所(株)が2015年に行った調査によると、経営者の在任期間が短くなるほど親族以外の役員・従業員や社外の第三者への承継する割合が多くなっており、在任期間が10年未満の企業では半数以上の会社で親族外の後継者への事業承継が行われています。