【相続】信託の登場人物
2022/05/18
目次
【信託の主な当事者】
信託の主な登場人物には委託者、受託者、受益者があります。委託者と受益者が同一人の信託を自益信託、委託者と受託者が同一人の信託を他益信託といいます。
①委託者
委託者とは、自己の財産を契約、遺言、宣言により信託する者のことを言います。
②受託者
受託者とは、委託者から託された信託財産を信託行為の定めに従って管理・処分する義務のある者のことを言います。未成年者、成年被後見人、被保佐人は、受託者となることができません。
③受益者受益者とは、信託財産から生ずる経済的な利益を受ける者のことを言います。未成年者や認知症により意思表示が難しい場合等でも、問題なく受益者となることができます。
【任意で設定できる登場人物】
信託では、主な登場人物の他、信託行為で定めることにより、任意で選任できる登場人物がいます。
①信託監督人
信託監督人とは、受益者の代わりに受託者を監視・監督する者のことを言います。信託監督人は、受益者が未成年者、認知症等の場合で、受託者の監視・監督が困難な場合等に選任を検討します。
②受益者代理人
受益者代理人とは、受益者に代わり、受益権を行使する者のことを言います。受益者代理人が選任されると、受託者を監督する権利及び信託行為に別段の定めがある場合を除き、受益者自身がその権利を行使することができなくなります。受益者代理人は、受益者が複数の場合に、迅速な意思決定を行うことを想定して選任されることが多いようです。
③信託管理人
受益者が現に存しない場合に、受益者の代わりに受益権を行使する者を言います。信託管理人は、胎児などを受益者とした場合に選任することができます。
④同意者・指図権者
受託者の信託財産の管理・処分等に際し、同意・指図行うことができる者を言います。
⑤受益者指定権者・受益者変更権者
信託開始後、受益者を指定又は追加、変更できる権利を持つ者を言います。受益者の素行が悪くなった場合など、事後的に受益権者を変更することができます。
委託者兼受益者を祖父、父を受託者(第2受益者)、第3受益者を孫A又は孫にBとし、より介護してくれた方を受益者として財産を受け取ってほしいという思いがあるとします。どちらか決めかねているときに、祖父亡き後、父を受益者指定権者としておくことで、最終的な受給者を父に決定してもらうことが可能になります。また、当初第3受益者を孫Aとしておき、後で状況に応じて受益者を孫Bに変更することも可能です。
【受託者の権限と義務】
信託法には、受託者の権限と各種義務が定められています。
●受託者の権限
受託者は、信託の目的を達成するために、信託財産の管理・処分等の必要な行為をする権限を有します。なお、信託行為で受託者の権限の範囲に制限を加えることもできます。信託の目的を達成するために必要な管理・処分等の行為がどの程度まで含まれるかは、信託の目的や信託財産の性質に応じて、信託行為で定めておくといいでしょう。
●受託者の義務
①善管注意義務
受託者は、善良な管理者の注意義務をもって信託事務を行う必要があります。
②忠実義務
受託者は、受益者のために忠実に信託事務の処理をする必要があります。これは、受託者本人や委託者ではなく、受益者のために信託事務を遂行することを規定していますので、受益者と利益が相反する行為や競合行為は原則禁止となります。例えば、信託財産を受託者自身の固有財産とする場合です。
③分別管理義務
受託者は、信託財産に属する財産と、受託者固有の財産等を明確に分別して管理しなければなりません。
④公平義務
受益者が2人以上いる場合において、受託者は、受益者のために公平にその職務を遂行しなければなりません。
⑤帳簿等の作成等、報告、保存義務
受託者は、信託期間中、信託財産に係る帳簿等の書類を作成する義務があります。また、1年に一回、貸借対照表や損益計算書等の財産開示資料を作成し、受益者に報告しなければなりません。これら信託の書類については、10年間の保存義務があります。
⑥損失補填義務
受託者が任務を懈怠したことにより生じた、信託財産の損失等は、受益者の請求により、損失補填または原状回復責任を負います。
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