【終活】寿命に合わせ年金支給 イギリスで進む受給年齢引き上げ

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相続・終活マガジン

【終活】寿命に合わせ年金支給 イギリスで進む受給年齢引き上げ

2022/06/29

目次

    【英国の公的年金】

    英国が公的年金の受給開始年齢の引き上げを進めています。今の66歳を2026~28年にかけて67歳に上げる予定で、来年には制度の改定を控えています。背景には年金財政の安定だけでなく、長寿命化に伴う受給の世代間格差をなくすという考え方があります。延びる寿命を考慮した年金制度の検証は日本も避けられない状況です。

     

    英政府が運営する「国家年金」の支給額は1951年4月以降に生まれた男性の場合、満額で週に185ポンド(約3万円)となっています。原則として公的な年金はこれだけで私的年金に頼る部分は大きいですが、それでも老後の貴重な収入源です。

    (図表出典:日経新聞)

     

    英国でも人口の高齢化が進み、年金をもらう世代の人口はこれから25年間で2割以上増えます。政府は年金費用の膨張を防ぐため、受給開始年齢を段階的に引き上げています。2020年10月までに、それまでの65歳から66歳に徐々に引き上げました。

     

    今後はまず、26年~28年にかけて67歳に引き上げます。17年には68歳への引き上げを当初案の46年ではなく、39年に7年前倒しする案が示されました。これも来年に迫る6年に1回の制度見直しで正式に決まる可能性があります。

    図表出典:日経新聞)

     

    70歳の手前まで受給を遅らせるのは、年金財政の安定と公平性を両立しようとしているためです。

     

    第1の目的は年金財政の安定にあります。英予算責任局の試算では人口の高齢化に伴い、年金支出の国内総生産(GDP)比は21年度の4.8%から49年度には6.2%に上がります。受給開始の年齢を上げた場合の試算であり、上げなければ支出はさらに膨らみます。

     

    英国の公的年金の支給額は年1回改定され、物価上昇率と賃金上昇率、2.5%の3つの指標のうち最も高い率を採用します。年金が目減りしない仕組みとする一方で、支給を遅らせることで年金財政の均衡を図ります。

     

    もう1つ重視するのは、「成人期間の3分の1を年金受給の期間とする」との考え方です。年金は誰もが働いている間、所得の一定割合を年金保険料として負担しています。長寿化が進むのに受給が始まる時期が同じなら、将来世代は平均すると長く年金をもらいます。受給の開始を遅らせば、不公平感をなくせます。

     

    寿命の延びに合わせて受給開始年齢を決める国は他にもあります。デンマークは30年までに支給開始を68歳まで引き上げ、それ以降は亡くなるまでの受給期間が一定になるように平均寿命に連動して開始年齢を定める方針を示しています。

     

    英国内でも異論はあります。ポイントは今後の寿命をどう見るかです。英政府が20年に試算した65歳の男性の47年時点での平均寿命は87.1歳で、14年の試算より2.8歳短くなりました。女性も89.3歳と2.6歳縮みました。

     

    ロンドン大ベイズ・ビジネス・スクールのレズ・メイヒュー教授は「貧困層で寿命がわずかに縮み、全体の伸びを抑えている」と分析します。英政府は「新型コロナウイルスによる超過死亡が寿命に影響している可能性がある」と指摘します。

     

    こうした試算を受け、元年金担当の閣外相(副大臣級)も参画する英コンサルタントLPCは昨年末、「67歳までの引き上げは計画より23年遅らせて、51年にすべきだ」とのリポートを発表しました。この案を実行すると、総額で2,000億ポンド(約33兆円)ほどの財源が必要になります。

     

    【日本、受給抑制に課題】

    年金は日本でも議論になっています。2020年度までの現役世代の賃金減は高齢者の負担感につながるが、年金財政の安定には給付の抑制は避けられない面があります。

     

    日本は受給開始年齢の引き上げではなく、受け取る年金の額を抑える方式で年金財政を安定させています。過去の物価や賃金の水準が遅れて受給額に反映されるため、今回は物価が上がる局面での給付減になります。

     

    日本では現役世代が払う年金保険料は水準が固定されています。高齢者に支給する年金額は、現役世代の人数の変化と平均寿命の伸びを考慮して、賃金や物価の伸びほど増えないように調整します。「マクロ経済スライド」と呼ぶこの仕組みは04年の制度改正で導入されました。

     

    マクロ経済スライドの適用には、名目の年金額が前年度を下回らないようにする「名目下限措置」と呼ぶルールがあります。賃金の下落を反映した22年度の年金額には適用されず、来年度への持ち越しが発生しています。

     

    一方、日本でも寿命は延びます。国立社会保障・人口問題研究所は15年に男性が80.75歳、女性は86.98歳だった平均寿命は65年に死亡中位シナリオでそれぞれ84.95歳、91.35歳になると予測します。出生数は基本的な予測を大きく下回り、現役世代の保険料で賄う年金財政には不安が多くあります。日本でも支給水準を維持するために受給年齢を引き上げ、より長く働くことで支給されない期間をカバーする必要性が高まっています。

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