【相続】不動産に関わる法律には何があるのか
2022/11/22
目次
【不動産に関わる法律とは?】
相続において、相続財産に占める価値の割合が高いものが不動産です(相続財産の約40%)。そして、日本では、不動産に関する法律がたくさんあります。それは、不動産は人が生活していく上で欠かせない大切なものであり、人々の暮らしや仕事を始めとした様々な場面で、不動産を売ったり、買ったり、貸したり、借りたりなどの形で取引されることになるからです。そして、不動産は一般的に高価であり、数も限られていることから希少性があり、車や家財道具などの動産に比べて、慎重な取引を求められることが多く、そのために取引する際には多くの法律などの規制に従う必要があります。
例えば、不動産を買った際には法務局で「所有権移転登記」をする必要があり、不動産を売ったり、買ったり、贈与したり、贈与されたりして所有権を移す際や、不動産を賃貸で人に貸す、人から借りる際には、それぞれ契約を結ぶ必要があり、不動産を相続する際には遺言書や遺産分割協議書などが必要となります。これらはいずれも法律に基づき、法律の定めにしたがって行うことになります。
【それぞれの場面で関わる法律は?】
では、不動産について、どのようなときに、どのような法律が関わるのか、実際に例を見ていきましょう。
【①土地を利用する際に関わる法律】
土地の上に建物を建てる、土地を一定量以上削る、一つの土地を二つ以上の土地に分ける、土地の地目を変える(例えば、畑を宅地に変える)などのときに関わる法律です。次に代表的な法律を上げてみます。
都市計画法は、土地が勝手に開発されて、街全体の健全な発展を乱されないようにするために、建物を建築することができるエリアを定め、エリアごとに建てられる建物の種類・規模・用途などを定めています。また、建物の建ぺい率(敷地に建てられる建物の表面積のこと)や容積率(敷地に建てられる建物全体[各階]の合計面積のこと)、防火対応(万が一火事が起きた際の延焼防止や風通しの確保のこと)に関することや、建物を建てるために土地を削ったり、土地を分けたりするなどの開発をする際の手続なども定めています。
国土利用計画法は、土地がお金目的で取引され、乱れた開発が続出することを未然に防ぐために、一定規模以上の土地について、売買などの取引をする際の手続きなどを定めています。
農地法は、日本において農地が限られた資源であり、かつ、米や野菜を安定的に生産・供給するために、農地を農地以外のものにすることを規制しています。その為、田畑などの農地を宅地に変える際の手続などを定めています。なお、農地法に関連する法律として生産緑地法があります。この法律では、農地のうち、生産緑地の指定は法が施行された土地は、税金を安くするという税制優遇を行う制度が設けられています。この生産緑地の指定は2023年3月から特定生産緑地制度へと移行しています。
【②建物を建てる際に関わる法律】
土地上に建物を新築する、改築する、増築する、などのときに関わる法律です。以下に代表的な法律をあげてみます。
建築基準法は、建物の建築についての基準を定め、建物の安全性や住み心地などを確保するための法律です。例えば、前述した土地を利用する際に関わる都市計画法で定められたエリアごとに、建物の具体的な使い方(住宅や商業施設、工場など)や、その使い方ごとの高さ、階数、面積などを定めている他、建物の安全確保に関する基準、万が一の際の防火や風通し、避難に関する基準などについても定めています。また、建物を建てる際の手続なども定めています。
長期優良住宅の普及の促進に関する法律は、住宅の解体などをする際に出される廃棄物の排出を抑制し、環境への負荷を減らすと共に、建て替えに伴う費用の削減によって負担を軽減し、より豊かで優しい暮らしへの転換を図ることを目的とする法律です。長期優良住宅の認定基準として、劣化対策や耐震性、維持管理、バリアフリー、省エネ、居住環境、維持保全計画などの性能項目を定めています。
都市の低炭素化の促進に関する法律は、社会における二酸化炭素の排出量について、その相当部分が都市部において発生していることから、都市部の低炭素化の促進を図り、都市の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。都市の低炭素化に関する基本的な方針や計画の策定及び措置、低炭素建築物の普及の促進に寄与する施策などが定められています。
【③土地建物の契約を結ぶ際に関わる法律】
土地や建物を売ったり、買ったり、貸したり、借りたり、建物を建てる、相続による土地や建物を取得するなどの際に、それぞれ「売買契約」「賃貸借契約」「請負契約」「遺産分割協議書」などの契約等を結びますが、その時に関わる法律です。以下に代表的な法律をあげてみましょう。
民法は、各契約が有効に成立するための要件や、万が一トラブルがあった際の基準、不動産の状態や内容が契約に適さないときの責任(「契約不適合責任」といい、以前は瑕疵担保責任とされていた)、相続に際して考える基準など、基本的な考え方を定めています。契約や協議内容について、契約の相手方と争いが生じた場合や、そもそも契約の相手方と取り決めが無いような場合、原則として民法に基づいて協議し解決することになります。
借地借家法は、主として借り手である賃借人(借主)の立場を守ろうということで作られた法律ですが、土地(ただし、土地の上にある建物の所有を目的とするものに限る)及び建物の賃貸借契約に関して、民法に優先して適用される法律です。例えば、土地・建物の賃貸借契約の期間や更新の際の基準・終了させる場合の要件などについて定めています。
消費者契約法は、一般的に事業者と消費者と消費者には交渉力や知識・情報量などに差があることから、事業者と消費者との間で結ばれた契約を対象に、消費者を保護しようという目的から、民法に優先する規定を設けています。
具体的には、事業者の不適切な行為の結果、消費者が誤った認識や困惑をしたまま契約を締結した場合は、その契約を取り消すことができる旨を定めています。また、契約内容に消費者の権利を不当に害する条項がある場合には、その契約条項を無効とすることなども定めています。
宅地建物取引業法は、宅地建物取引業者が売主となる売買契約について、消費者を保護しようという目的から、契約内容の一部に制限を加えるなどの、民法に優先する規定を設けています。
具体的には、土地建物を売買する際の手付金や違約金などの金額の制限や、前述の契約不適合責任に関する制限が設けられており、これらの制限に違反する契約条項は無効となる旨を定めています。また、事業者が自ら売買する際や、事業者が他人間の売買や賃貸借などの代理や媒介(仲介)をする際の広告活動の規制、買主や借主に対する重要事項の説明義務(物件に関する事項や取引条件)、契約内容を記載した書面の交付義務なども定めています。
【④土地建物の権利関係に関わる法律】
土地建物の権利は、自分が土地建物を所有する権利や利用する権利など、とても大切なものであり、かつ相手方や利害関係者とのトラブルを回避するために重要な権利です。以下に代表的な法律をあげてみましょう。
民法は、土地建物を所有する権利を、物権(所有権や地上権、抵当権など)と、債権(賃借権など)に分け、各権利の内容やその効力など、基本事項を定めています。
建物の区分所有等に関する法律は、分譲マンションなどの区分所有に関する権利や義務の他、維持管理に関する事項などを定めています。例えば、専有部分・共用部分・敷地に関する権利関係の他、区分所有者の決議における議決権に関する事項などを定めています。
借地借家法は、前述の通り、主として賃借人(借主)の立場を保護しようという目的から、土地の借地権(地上権・賃借権)や建物の賃借権に関して、民法の規定に優先して適用される法律です。例えば、自らが持っている借地権や建物の賃借権を、他の第三者に対し、自分は借主であることを有効に主張するための要件などが定められています。また、借地借家法では、当事者間で借地借家法の規定と異なる合意をしても、そのような合意は無効となり、強制的に借地借家法の規定が適用される条項も含まれています。
マンションの建替え等の円滑化等に関する法律は、高度経済成長期などに建てられた多くのマンションが今後老朽化することへの対応策として、建て替えを円滑に行うための法律です。具体的にはマンション建替え組合の設立、権利関係の円滑な移行などの手続を定めています。
【⑤土地建物の登記に関わる法律】
土地や建物を売買や贈与、相続などによって取得した場合、自分が所有権者であると他の第三者に主張するためには、土地建物を登記する必要があります。登記により、不動産の権利関係や状況を世の中に対して公に示し、自らが土地建物の所有権を持っている権利者であること及びその内容を、他の第三者に明らかにすることができるのです。以下に代表的な法律をあげてみましょう。
不動産登記法は、不動産登記に関する手続を定めることで、不動産に関する権利を守ることとスムーズな取引を図るための法律です。具体的には登記の対象となる権利や内容、登記に必要な書類と手続きなどを定めています。
【不動産に関わる法律の役割は?】
以上のように、不動産に関わる法律の内容を説明してきましたが、法律の役割は、様々な行為を「規律」することで、当事者間の取引の基準を定めると共に、スムーズな取引を推進することにあります。ここで、紹介した法律は一例です。他にも多数の法律が存在し、また、法律は難しい言葉や内容で書かれているため、一般の人では分かりにくいことが多いのも事実です。その為、何かお困りの際には、当センターへご相談ください。司法書士、弁護士など法律の専門家と連携してご相談に乗らせていただきます。
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