【相続】慌てない相続の準備
2024/12/10
目次
【法定相続人と相続順位】
相続とは死亡した人の財産を故人と一定の関係にある人が受け継ぐことです。亡くなった人のことを「被相続人」、財産を受け継ぐ人のこと「相続人」といいます。相続の手続きで最初に行うのは、この相続人の確認です。
たとえば被相続人の兄弟などであれば、亡くなったあとに財産を相続できるのではないかと考えてしまうかもしれません。しかし、相続にあたっては、被相続人の血縁者全員が必ずしも権利を持つというわけではないのです。民法上に定められた相続順位に従う必要があり、それによって遺産相続の内容が決定します。
ここでは、相続人の確認と決定の手順についてみていきます。
【法的に認められている相続の優先順位を確認】
まず、相続の権利が一番に保証されているのは配偶者です。もし被相続人に配偶者がいるなら、必ず相談人となります。ただし、この「配偶者」とは法律で認められた配偶者のこと。内縁関係や事実婚のパートナーは対象となりません。
つねに相続権を持つこの配偶者を別格として、法的に認められる相続人として、配偶者を除いて第1順位から第3順位までが決められています。これが「法定相続人」です。
この順位が上の人物から相続権が与えられ、第1順位がいなければ第2順位、第2順位がいなければ第3順位というように、相続権が引き継がれていくことになります。
法定相続人の第1順位は、被相続人の直系卑属、つまり子どもたちです。子どもがいなければ第2順位被相続人の直系尊属である父母、または祖父母。それにも該当する人がいなかった場合は第3順位の傍系にあたる、兄弟姉妹になります。
この順位は基本ではありますが、被相続人の子どもが亡くなっている場合、すぐに両親が相続人になるとは限りません。亡くなっている子どもの子ども(被相続人にとって孫)が存命なら、相続権は第2順位の両親ではなく孫のものになります。
これは第3順位の兄弟姉妹でも同様で、兄弟姉妹が亡くなっていれば相続人
はその子ども(被相続人にとって甥・姪)です。このような相続の仕方を「代襲相続」といいます。
【不要な争いを避けるために法定相続人と相続分は?】
相続順位を定めているのは、遺産相続についての争いを避けるためです。たとえば、第1順位の子がいるとき、第2順位の親や第3順位の兄弟姉妹は相続人にはなりません。こうした相続人のパターンは次の通りです。
1配偶者(夫または妻と子ども(または孫)
2配偶者と親(または祖父母)
3配偶者と兄弟姉妹(または甥・姪)
4配偶者のみ
5子ども(または孫)のみ
6親(または祖父母)のみ
7兄弟姉妹(または甥・姪)のみ
法定相続人に関しては、相続財産の割合についても定められています。親と配配偶者と子どもが相続する場合は、配偶者と子ども全員分がそれぞれ2分の1ずつ。子どもがなく、親と配偶者が相続する場合は、配偶者に3分の2で親に3分の1.子供も両親もいなくて配偶者と兄弟姉妹が相続する場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。
相続する子供や兄弟が複数人いる場合、彼らの相続財産はこの法定相続分をそれぞれの人数で割って算出されます。例えば、配偶者が子供二人の3人で財産を分ける場合、配偶者と子供に2分の1ずつに分け、子供二人の間でそれをさらに2分の1、子供は一人につき4分の1ずつを受け取ることになるのです。
ただし、これはあくまで、相続をスムーズにするために法的に定められた基準にすぎません。たとえば、遺言書が残されていた場合には、その内容が優先され相続が行われます。
場合によっては法定相続人以外が相続人に指定されていたり、法定相続人の中の一人に全ての財産を相続させると指示されていたりする遺言書もあり得ます。
その様な内容であっても、法的に認められる形式になっている限り、遺言書の内容が優先されます。相続では、被相続人の意思の尊重が前提です。これに不満がある場合には、特定の割合で相続権を要求することもできます。(遺留分)
【相続人だったはずが相続権を失ってしまう!?】
相続は、必ずしも法定基準に従って行わなければならないわけではありませりません。相続財産の分割は、相続人たちの間で話し合い、納得のいく分割の仕方と割合を決定することができれば、その内容で分割することが可能です。なお、もし遺言書が残されておらず、第3順位まで探しても相続人に該当する人物がいない場合には、通常、被相続人の財産は国庫に入ることになります。
ただし、相続人の相続権が失われてしまうケースがあります。当然のことですが、相続人が亡くなっていれば、本人の相続権は残りません。先ほどの代襲相続であったように、相続の権利は子孫などに引き継がれ、子孫がいなければ、次の相続順位に相続権が移っていくことになります。
また、死亡の届出がなくても、生死不明の状態で7年以上が経過していたり、災害などに巻き込まれて1年以上生死不明になっている人は、死亡したものとして扱われます。
ほかには、本人が生きていても相続の権利がなくなるケースもあります。その条件は、たとえば、被相続人を脅迫するなどして遺言書の撤回や変更、取消などをさせようとした場合、または、遺言書を破棄、隠匿、偽造していた場合などにも相続権は剥奪されます。
また、被相続人が殺害されたことを知りながら告発や告訴を行わなかったり、相続順位が上の人物や同位にある人物を故意に殺害したりしようとした場合にも、相続権がなくなってしまいます。
【相続人の確認のためには戸籍謄本で確認する】
法的に定められている相続人に関しては以上のとおりです。ただし、実際に相続を行う際には、法定相続人が何人いるのか、相続人は被相続人と、それぞれどんな関係なのか、知られていない血縁者はいないかなどを明確にしたうえで申告を行わなければいけません。そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍を用意して、すべての相続人の存在を確実にしておく必要があります。
ここでいう戸籍とは、戸籍謄本、戸籍抄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本の4種類です。出生から死亡までの戸籍を求められた場合には、この4つすべてを用意しなければなりません。とはいえ、これらすべての戸籍をみる機会はなかなかないのが普通です。それぞれがどのようなもので、どのような違いがあるのかを紹介していきましょう。
まず、戸籍謄本とは、世帯全員分の戸籍の証明書のことです。現在は戸籍全部事項証明書ともよばれます。二番目の戸籍抄本は、戸籍謄本から一部の人物の情報を移した証明書のことです。相続人になるはずの子どもが亡くなっている場合などはその人物の戸籍抄本を確認し、代襲相続する孫の有無などを確認します。戸籍個人事項証明書ともよばれます。
改製原戸籍謄本は、戸籍法の改正前や、コンピュータが導入される前に作成された戸籍謄本のことです。書き替えされる前の戸籍は、除籍した人物にバツ印がつけられるなどして、除籍の事実が一目でわかるようになっていました。
ただし、戸籍改正に際してはバツ印の人物の記載は削除されています。つまり過去に離婚などした経験がある場合、改製原戸籍謄本の確認が必要になります。最後の除籍謄本は、死亡や結婚によって在籍者がいなくなった戸籍の謄本のこと。その戸籍に入っていた人物がいなくなり、空になった戸籍で、被相続人の誕生時点までさかのぼり、詳細を確認することができます。
相続では、その人物の戸籍上の関わりが、すべて必要になります。そのため、婚姻前の戸籍や転籍前の戸籍などがある場合を考え、これらをすべて取り寄せ、調べていく必要があるのです。戸籍がなければ、相続の手続きを行えない場合も多く、調査したり、収集したりする手間がかかってしまうでしょう。
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