【終活】60歳過ぎても働く 知っておきたい年金・給付金
2021/03/30
目次
【60歳を過ぎても働くことは、もはや一般的】
4月から70歳までの就業確保が企業の努力義務となります。60歳を過ぎても働くことは、もはや一般的になってきており、65歳までの就業が多くなっています。これからは70歳まで働くのが一般的となる時代になってきそうです。
【70様までの就業機会確保(改正高年齢者雇用安定法)】
<改正の趣旨>
少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図ることが必要。
個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上整え、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務を設ける。
<現行制度>
事業主に対して、65歳までの雇用機会を確保するため、高年齢者雇用確保措置(①65歳まで定年引上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、③定年廃止)のいずれかを講ずることを義務付け。
<改正の内容(高年齢者就業確保措置の新設)(令和3年4月1日施行)>
○事業主の対して、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、以下の①~⑤のいずれかの措置を講ずる努力義務を設ける。
○努力義務について雇用以外の措置(④及び⑤)による場合には、労働者の過半数を代表する者等の同意を得た上で導入されるものとする。
【70歳雇用、企業の努力義務に】
公的年金の受給開始年齢は原則65歳です。厚生年金に入っていれば生年月日によって65歳より前に特別支給の老齢厚生年金を受け取れるが、この措置は2021年度(4月21日以降)に60歳を迎える男性からなくなります。年金がもらえる65歳まで働くことは今後、ますます当たり前になってきます。
【公的年金の受給開始年齢を遅くする「繰り下げ受給」】
現行の高年齢雇用安定法では65歳までの継続雇用が企業に義務付けられています。さらに、法改正で、70歳までの「定年引上げ」や「継続雇用制度の導入」「継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」などが努力義務となります。もし、勤め先にこうした制度ができれば、65歳以降も働き続けることが選択肢となります。
その際に検討したいのが、公的年金の受給開始年齢を遅くする「繰り下げ受給」です。公的年金は60歳から70歳(22年度からは75歳)の間で受給開始年齢を選べ、65歳より遅くすると年金額が上乗せされる仕組みとなっています。
もし、70歳まで繰り下げれば年金額は42%増えます。65歳から受け取る年金が年180万円なら、255万6000円になります。月額で21万円を超えると、やりくりもとても楽になるはずです。
但し、会社勤めなどで厚生年金に20年以上加入した人で年下の配偶者がいる場合は、繰り下げの際に注意が必要です。配偶者が原則65歳になるまで「加給年金」が上乗せされますが、もし老齢年金の受給を繰り下げるとその間は加給年金を受け取れず、後で増額もされません。加給年金に影響しない老齢基礎年金のみ繰り下げるのがおすすめです。
繰り下げをせず、年金を受け取りながら働く場合にも注意点はあります。働いてもらう賃金と年金受給額の合計が一定額を超えると、年金の一部あるいは全部が支給停止となる「在職老齢年金」という制度があるからです。
現行制度では、65歳以上の人は年金と賃金の合計額が47万円を超えると、年金がカットされます。60歳から64歳の人は合計額が28万円ですが、22年度から47万円に引き上げられ、年齢にかかわらず47万円が支給停止の基準額となります。
47万円であれば働きやすくはなりますが、賃金の計算方法には注意をしたいところです。在職老齢年金では、前年のボーナスを含めた金額を12で割り1か月あたりの賃金を計算します。ボーナスが多かった人は、賃金がかなり下がっても年金の一部がカットされる可能性があります。受給開始を繰り下げることを検討した方が良いかもしれません。
【賃金75%未満なら給付金も】
もっとも現状では60歳以降に受け取る賃金は大幅に下がることが多いでしょう。そうした場合、雇用保険に加入していれば、「高年齢雇用継続基本給付金」を受け取れることがあります。60歳以降も働く際、60歳時点に比べた賃金が75%未満に下がることなどが受給条件です。
受け取れる額は賃金の低下率などによって異なりますが、低下率が61%以下なら減額後の賃金の15%となります。例えば、60歳時点の賃金が月50万円で、同じ企業に再雇用された後の賃金が同25万円に下がったとすると、減額後の賃金25万円×15%=3万7500円給付されます。給付金は2か月ごとに受け取れます。
(参照:厚生労働省 高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて/https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000655512.pdf)
家計で管理する際には給付金を給与とは別の口座で受け取ることをお勧めします。継続雇用ではボーナスも減ることが多く、それまでボーナスを充てていた家電の買い替えなど特別支出の備えにすると良いでしょう。
ただ、高年齢雇用継続給付の制度は25年度から給付率が10%となり、その後の縮小・廃止が予定されています。年齢により、もらえる金額にも差が出ることも注意点です。
【老年人口の増加が鮮明に】
1983年3月26日、総務庁(現総務省)が発表した推計人口(1997年10月1日時点)で、65歳以上の老年人口が1976万人と14歳以下の年少人口(1937万人)を初めて上回り、少子高齢化の進行が明らかになりました。その後も高齢化が進み、2021年3月1日時点では老年人口が総人口の29%(概算値)となりました。
一方で働き手の中核を担う15歳~64歳の生産年齢人口(現役世代)は減少し、割合は59%まで低下しました。このままいけば、2065年には高齢者1人を1.3人の現役世代が支えるということになります。
改正高年齢者雇用安定法はこうした背景から施行されることとなりました。罰則のない努力義務ではありますが、将来的には義務化される可能性もあります。また、高齢者の定義の見直しという議論も出ており、年齢にかかわらず支え合う仕組みの模索も続きます。
70歳まで働く。それが当たり前の時代にいずれなることでしょう。
今回はここまで。ありがとうございました。