死後事務委任契約の際のお金のこと

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相続・終活マガジン

【終活】死後事務委任契約の際のお金のこと

2021/03/30

目次

    【お一人様~「死後事務委任契約」~死後事務委任契約の際のお金のこと】

    死後事務委任契約を執行するためには、葬儀費用や遺品整理費用等、様々な費用がかかりますし、専門家に依頼する場合には相応の報酬を支払う必要もあります。

     

    葬儀を直葬(火葬のみ)にする等コンパクトな設定にしたとしても、葬儀代等の実費と報酬を併せると100万円を超える金額が必要になる場合も有ります。この死後事務委任を行うために必要な費用を委任者の生前、どのように管理するのかは死後事務契約の大きなポイントです。執行費用の管理方法としては、次のようなものが考えられます。

    【受任者に執行費用を預託する】

    契約時にあらかじめ見積もっておいた執行費用を、受任者に預けておくという方法です。受任者の立場としては、執行費用を確実に確保できるため、資金不足で死後事務を執行できないというリスクが軽減されますし、委任者の死亡後、すぐに費用の支払いが行えるメリットがあります。

     

    一方、委任者の立場としては、受任者の経営破綻や横領のリスクがあります。記憶に新しいところでは、2016年、死後事務委任契約の引き受けをしていた公益財団法人日本ライフ協会という団体が、契約者からの預託金2億7,400万円を流用していたとして大きなニュースとなりました。この事件後、日本ライフ協会は破産し、役員も逮捕されましたが、契約者には預託金の10分の1程度の金額しか返還されなかったそうです。契約を引き受ける事業者や専門家の経営状態を正確に知ることは難しいですし、信頼してお金を預けられる相手かどうか慎重に判断する必要があります。

    【信託会社に執行費用を信託する】

    受任者に執行費用を直接預けるのが不安という場合には、信託会社を受託者とする信託契約を結び、信託会社に執行費用を管理してもらうという方法があります。通常、信託銀行が引き受ける信託契約は、数千万円単位の信託財産がなければ契約できないのが、一般的ですが、信託会社では、死後事務委任契約の執行費用を決済のために、数百万円単位で契約できるプランを備えているところもあります。

     

    委任者の死亡後、信託会社は、死後事務の執行状況を確認したうえで葬儀会社への支払いや受任者への報酬支払を行います。信託会社を利用すると、①死後事務委任契約を解約した場合、預けていた執行費用が速やかに返還される、②信託会社は経営基盤がしっかりしており、万が一経営破綻しても、預託金は信託法により保全される、③信託会社が受任者の仕事ぶりをチェックしてくれる、など沢山のメリットがありますが、一方で決して安くはない信託報酬が委任者の負担として毎年発生するというデメリットもあります。

     

    「安全だけれど、長生きするほど経済的負担になる」というのが玉に傷の管理方法です。

    【生命保険を活用する】

    委任者が死亡したときに保険会社が支払う死亡保険金を執行費用にあてるという方法もあります。生命保険契約では、契約者=生命保険契約を結び、保険料を支払う人、被保険者=保険金支払いの原因となる人(被保険者が死亡すると保険金が支払われる)、受取人=保険会社から保険金を受け取る人の3者が存在しますが、死後事務委任契約では、契約者及び被保険者が委任者となる者を活用します。

     

    通常、生命保険契約の死亡保険金受取人には、2親等以内の親族までしか指定できないとしている保険会社が多く、親族ではない受任者を保険契約上の死亡保険金受取人に指定することはできません。しかし、保険法第44条第1項において「保険金受取人の変更は、遺言によってもすることができる」と定められており、遺言を活用すれば、いったん親族を受取人として生命保険契約をしたのち、受取人を親族から受任者に変更するという事ができます。

     

    保険会社に月々の保険料を支払っていけば、契約で定められた金額の死亡保険金が支払われるため、委任者は契約時に多額の費用を負担する必要がありません。保険会社という経営破綻のリスクの少ない第三者に、安全に費用を管理してもらえるというメリットがありますし、信託会社に支払う信託報酬のような管理コストも発生しません。

     

    但し、生命保険の活用にはいくつかの問題点もあります。

     

    ●そもそも保険契約ができない!

    保険契約の場合、新たに契約をしようと思っても、健康状態や年齢によって希望どおりの契約に加入できない場合があります。

     

     

    ●保険金が支払われない場合がある!

    契約者が告知義務違反(契約時に保険会社から質問された項目に偽りの回答をしていた場合など)や免責事由(免責期間中の死亡や被保険者の自殺など)に該当した場合には、保険金が支払われない可能性があるといったリスクがあります。

     

    また、傷害保険(怪我や事故による死亡のみ死亡保険金が支払われるもの)や定期保険(契約で定めた一定期間内に死亡した場合のみ死亡保険金が支払われるもの)など、保険契約のタイプ、委任者の死因や年齢によって保険金が支払われないリスクがあるのも難点です。

     

    ●受取人変更ができない契約もある

    生命保険に似ている商品で都民共済、府民共済、県民共済といった「共済」がありますが、厳密にいうと共済は生命保険には当たらず、保険法の適用も受けません。よって、原則として遺言による受取人の変更・指定はすることができません。通常の生命保険についてもそうですが、受取人の指定できる範囲、変更できるかどうかは約款を確認する必要があります。

     

    ●法人名義で受取人に指定できない

    死亡保険金の受取人は法人名義にすることができませんので、受任者が株式会社、司法書士法人などの場合は、便宜上、会社・事務所の代表者を受取人にする必要があります。保険会社から実際に保険金が支払われた場合は、あくまでも個人が受領した金銭という扱いになりますので、税務上・会計上の調整が複雑になります。

     

    ●相続税の課税対象になる場合がある

    契約者、被保険者が同じ生命保険契約の死亡保険金は、遺贈により受領したものとして相続税法上の「みなし相続財産」の扱いとなり、相続税の課税対象になります。

     

    委任者の相続人の人数による基礎控除額、遺産総額にもよりますが、受任者が受領した死亡保険金に相続税が課せられる可能性があります。

     

    これらの問題が無かったとしても、「遺言による受取人変更」という手続きは保険会社にとってイレギュラーな手続きであるため、審査に時間がかかり、受任者に保険金が支払われるまで、数か月を要する場合もあります。受任者がスピーディーかつ確実に執行費用を確保できないリスクがあるのが、生命保険を活用する際のデメリットです。死後事務委任契約の契約前に保険会社に問い合わせをして、手続きの流れについて確認しておくことが重要になります。

    【委任者が執行費用を管理する】

    委任者が死亡する時まで自分自身で執行費用を管理する方法もあり得ます。委任者の管理する財産は現金・預金を問わず死亡時点で「遺産」扱いとなり、受任者であっても勝手に使うことはできません。そこで、活用するのが「清算型遺言」という、遺言を利用した決済システムです。

     

    清算型遺言とは簡単にいうと、「私の財産の中から葬儀代などの費用を支払い、残った財産を○○さんに譲ります」という内容の遺言です。この方法では受任者が遺言執行者の立場を兼ねます。遺言執行者には「遺産の管理人」としての権限がありますので、遺産の管理用口座を開設した上で、執行費用の管理口座にしていた銀行から預金の払い戻しを受け、葬儀などの死後事務を執行することが可能になります。

     

    そして、執行費用から葬儀代や報酬を差し引いた残金は、遺言者で指定した人や団体に引き渡し、業務完了となります。

     

    遺言書を公正証書遺言で作成しておけば、委任者の死亡から2週間程度で払い戻しを受けることができますので、受任者は、比較的スピーディーに執行費用を確保することが可能になります。

     

    葬儀代や入院費は死亡後すぐに支払わないといけないから、その分は受任者の建て替えになるの?と疑問に思う方もいるでしょうが、葬儀社や病院に事情を説明すれば支払期限の猶予をもらうことが可能ですし、そのような心配は特段ありません。

     

    委任者としては、受任者に執行費用を預けなくてよいことが最大のメリットで、万が一受任者とトラブルが発生した場合にも返金をめぐるトラブルが起こるリスクを避けることができます。

     

    一方、受任者の立場としては、委任者の死亡時に確実に執行費用が残っているかが大きなリスクとなります。受任者としては、委任者の資産状況(執行費用の取り置きをしておいても、生活に支障がないか)を慎重に判断した上で契約する必要があると言えます。

     

    いずれの方法もメリット・デメリットがありますが、死後事務委任契約そのものが委任者と受任者の信頼関係に基づくものですから、時間をかけて話し合いを重ねた上で決定していくのが良いでしょう。

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