【相続】信託契約を結ぶとどこで課税されるのか?
2022/06/08
目次
【信託契約時の課税関係】
信託の効力が発生した場合、税務上は、信託財産から経済的な利益を受ける者は誰かという実質に着目して課税されます。信託における形式的な所有者は受託者ですが、実質的な所有者は、信託財産から経済的な利益を受ける受益者であるため、当初所有者である委託者から、他の者へ受益権が移った時点で課税関係を検討します。
●信託設定時、委託者=受益者の場合(自益信託)
自益信託の場合には、信託の前後で経済的利益に変化がないため、流通税を除き課税はありません。
●信託設定時、委託者≠受益者の場合(他益信託)
他益信託の場合、当初委託者から信託の経済的利益が受益者へ移っているため課税関係が生じます。適正対価の授受がなく、無償で信託財産が移った場合は、贈与に順じて贈与税の課税対象になります。
【信託期間中から終了までの課税関係】
①信託期間中に受益者が変更した場合
信託期間中に受益者が変更した場合は、当初委託者から信託の経済的利益が受益者へ移っているため課税関係が生じます。適正対価の授受がなく、無償で信託財産が移った場合は、贈与に順じて贈与税の課税対象になります。適正対価の授受がある場合は、信託財産の売買がされたものと同様の扱いとなり、譲渡所得課税の課税対象となります。
②損益通算禁止の規定
信託の税務に損益通算禁止という問題があります。信託財産から生じた受益者である個人の不動産所得の損益はなかったものとみなす、という規定があるため、信託財産以外からの利益と相殺することができないのです。つまり、A不動産とB不動産のうちA不動産のみ信託財産とした場合で、A不動産は100万円マイナス、B不動産は100万円プラス計上だった場合でも、A不動産とB不動産の所得を合算することができず、B不動産の100万円の所得に対して課税されます。また、信託財産から生じた損失を翌年へ繰り越すこともできないため、A不動産の100万円の損失を翌年へ繰り越すことができません。大規模修繕などを控えている場合は、注意が必要です。
③信託終了時
受益者=帰属権利者の場合
信託終了時の受益者に残余財産を帰属させる場合、信託終了前後で経済的利益に変化がないため、流通税を除き課税はありません。
受益者キ帰属権利者の場合
信託終了時に受益者と異なる第三者を帰属権利者とした場合は、残余財産の経済的利益が帰属権利者へ移っているため課税関係が生じます。適正対価の授受がなく、無償で残余財産が移った場合は、贈与に順じて贈与税の課税対象になります。受益者の死亡を終了事由とした場合、受益者の死亡を原因として帰属権利者へ残余財産が移るため、贈与とみなされ、相続税の課税対象となります。
【信託の流通税】
不動産を信託した場合、通常の所有権の移転よりも税率が低く設定されているため、流通税の節税に信託を活用することもあります。なお、不動産の所有権を移転する際の流通税には、不動産登記事項の名義等を変更する際に発生する登録免許税、不動産を取得した人に課される不動産取得税があります。
①信託設定時
登錄免許税
不動産の所有権移転登記と同時に所有権の信託の登記を行います。
所有権移転の登記:非課税
(土地)所有権の信託の登記固定資産税評価額×0.3%
(建物)所有権の信託の登記固定資産税評価額×0.4%
不動産取得税
不動産取得税は発生しません。
②受益者の変更
登録免許税
受益者変更にかかる登記手続きの登録免許税
不動産1個につき金1,000円
不動産取得税
不動産取得税は発生しません。
③受託者の変更
登録免許税
受託者変更にかかる登記手続きの登録免許税は非課税
不動産取得税
不動産取得税は発生しません。
④信託の終了時
登録免許税
所有権移転分は、固定資産税評価額×2%
信託抹消分は、不動産1個につき金1,000円
不動産取得税
固定資産税評価額×4%
この記事は相続を考えている人、又は相続の対策を考えている人のために、参考になればと書かれています。相続について、ご質問、ご相談があれば、お気軽に「相続について教えて欲しい」とご連絡ください。「相続」のアドバイザーがお答えします。あなたの大切な「相続」をより良き「相続」にしていただくために、相続のアドバイスさせていただきます!
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