【相続】相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が新設

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相続・終活マガジン

【相続】相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が新設

2023/12/14

目次

    【相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が新設】

    2023年度の税制改正で、相続時精算課税制度による生前贈与(相続時精算課税贈与)にも年110万円の基礎控除が認められることになりました。2024年1月1日以降の贈与から適用されます。相続時精算課税制度は節税効果が少なく、贈与のたびに申告が必要など使い勝手が悪かったのですが、利用検討余地が大きく広がりました。

     

    生前贈与には大きく2つの方法があります。一つは暦年課税贈与で、贈与額に応じて毎年、申告・納税します。贈与額が多くなれば税率もアップします(10%~55%)。ただし、基礎控除の範囲内の贈与であれば申告・納税の必要はありません。相続税との税率の差を利用するなどして、毎年一定額を子や孫に贈与し、贈与者の死亡(相続発生)時の相続財産や相続税額を引き下げる手段として使われてきました。

     

    もう一つが相続時精算課税贈与で、特別控除の累計2500万円までは贈与時には贈与税を納めず、相続発生時に相続財産に贈与額を加算して相続税額を算出します。

     

    尚、贈与の累計額が特別控除を超えた場合、超えた部分に対して一律20%の贈与税が課税されます。納めた贈与税は相続税額から差し引き、贈与税額が相続税額より多い場合には還付されます。

     

    相続時精算課税制度のメリットの一つに、一括の贈与でも特別控除の2500万円までは贈与時に贈与税がかからないことが挙げられます。暦年課税贈与では子に2500万円を一括で贈与すると、45%と高い贈与税率が課せられます。特別控除を超える贈与への贈与税率が一律20%なのも、暦年課税贈与の税率と比較した場合、贈与額によっては低い税率で財産を移転できるメリットがあります。

     

    また、相続時精算課税制度では、価格上昇が見込まれる不動産や上場見込み株などの有価証券の贈与でも、節税の効果が期待できる相続時精算課税制度では、価格上昇が見込まれる不動産や上場見込み株などの有価証券の贈与でも、節税の効果が期待できます。

     

    相続時精算課税制度では贈与時の評価額で相続財産に加算するため、相続発生時より贈与時の評価額が下回っていれば、低い評価額によって財産を移転できます。また、生前にまとまった規模の財産を贈与して所有権を移転できるため、相続時に相続人の間で起きる紛争を防ぐ効果もあります。

    【撤回できないでメリット】

    しかし、相続時精算課税贈与にはデメリットもあります。まず、対象となるのは原則として60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子や孫への贈与のみで、配偶者やおい、めい、友人などへの贈与では認められません。尚、相続時精算課税贈与を使う場合は税務署へ届け出が必要になりますが、一度届け出れば撤回でき

    ず、途中で暦年課税贈与に戻すことはできません。

     

    また、財産規模が大きい人などの場合、生前贈与を毎年のように続けることで、相続発生時の財産を減らす節税策には不向きなことも挙げられます。相続時精算課税贈与では相続発生時には結局、贈与した財産を相続財産に加えて相続税を計算するため、毎年のように生前贈与を続ける場合は、贈与税を納めてでも暦年課税贈与を活用する方が節税効果は大きくなります。

     

    さらに、相続時精算課税贈与では、少額の贈与であっても贈与のたびに期限内の税務署への申告書提出が必要で、わずらわしさが制度利用者の負担になっていました。

     

    こうしたデメリットや制約も多かった相続時精算課税贈与ですが、23年度の税制改正で風向きが大きく変わりました。暦年課税贈与の基礎控除とは別に年110万円までの基礎控除が認められ、基礎控除を超える部分の贈与に対して累計2500万円の特別控除が適用されることになったのです。基礎控除の範囲内の贈与であれば相続財産へ加算する必要はなく、申告書の提出も不要になったため、利用者の負担は大きく軽減されます。

     

    さらに、暦年課税贈与では従来、相続時開始前3年分の贈与が相続財産に加算され、相続税の課税対象となっていましたが(生前贈与加算)、23年度税制改正では7年分に拡大され、来年1月1日以降の贈与から適用されることになりました。

     

    しかし、相続時精算課税贈与では、基礎控除以下の額は相続開始前7年分の贈与であっても相続財産への加算の対象とはならず、相続発生が近く見込まれる場合には、暦年課税贈与に比べて節税効果が大きくなりました。

    【財産次第では暦年贈与も】

    相続時精算課税贈与で年110万円の基礎控除が設けられた効果を、生前贈与加算が7年に延長された暦年贈与と比較してみましょう。1億円の財産があり、相続人となる人(推定相続人)が子2人だった場合、まったく生前贈与を行わないと、相続税負担は770万円になります。ここで、相続時精算課税贈与で2人に年110万円ずつ10年間、相続発生まで生前贈与したとすると、相続税額を330万円減額(節税)できます。

     

    一方、暦年課税贈与で年110万円ずつ10年間、贈与をしたとすると、生前贈与加算が7年となった影響で、相続税額の減額は129万円にとどまり、相続時精算課税贈与の方が節税効果は大きくなります。同じ条件で年110万円を20年間、生前贈与した場合も同様で、相続時精算課税贈与では相続税額を630万円減額できますが、暦年課税贈与では459万円にとどまります。

     

    ただし、財産の状況や贈与の年数によっては、暦年課税贈与のほうが依然として有利なケースがあります。財産が2億円で推定相続人が2人の場合、まったく生前贈与を行わないと相続税負担は3300万円になります。2人に年600万円ずつ10年間、生前贈与する時、相続時精算課税贈与では相続税の減額は660万円の一方、暦年課税贈与では732万円の減額となります。

     

    すなわち、相続時精算課税贈与はその制度上、そもそも相続財産が相続税の基礎控除額(3000万円+法定相続人の数×600万円)内に収まって相続税がかからない人には有利で、相続税率が10%の場合も生前贈与加算7年延長を踏まえれば有利となります。また、近い将来、相続発生が心配される人も、年110万円の贈与であれば、相続時精算課税が有利となります。

     

    このように財産の状況や贈与の年数などによって相続時精算課税贈与と暦年課税贈与のどちらが有利かは変わるため、事前に税理士に相談してシュミレーションしてもらうことも考えましょう。

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