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相続・終活マガジン

相続の疑問「相続税税率、相続税計算、手続き、基礎控除、の全てがわかる」

2020/12/16

目次

    【相続は死亡と同時に始まります】

    相続とは、故人が所有していた財産を、法律で定められた親族が引き継ぐことを指します。

    故人(財産を譲り渡す人)を【被相続人】、相続により財産を引き継ぐ人を【相続人】と言います。この言葉は相続において、最も大切な言葉なので、覚えておいてください。

    また、被相続人から相続人に引き継がれる財産のことを【相続財産】、又は【遺産】と呼びます。財産は、被相続人が亡くなると相続人に相続されます。このことを【相続の開始】と、言います。

     

    法律上では、例えば、亡くなった父親名義の財産(家や預金、家具や洋服、車などすべて)、父親の死亡と同時に相続人の物となります。

    上記のことは、あくまでも法律上のことなので、実際には相続開始時には預金も不動産も父親名義のままなので、財産を自由に使えるようにするためには、相続人が各種の手続きを行う必要があります。

    【遺産分割とは、なんですか?】

    相続人が1人であれば、その人がすべての財産を引き継ぐため、名義の変更などの手続きは比較的スムーズですが、相続人が複数いると、遺産を分割するための協議が必要となります。


    1)誰が
    2)何を
    3)どれだけ引き継ぐのかを決めて遺産分割の協議で決めてからでなければ、名義を変更する手続きを行うことはできません。

     

    複数の人で相続する場合、被相続人の財産は、いったん【相続人全員の共有】となります。

    この共有状態の財産を具体的に分けることを遺産分割といい、その話し合いのことを遺産分割協議と言い、それを書面にしたものを【遺産分割協議書】と言います。

    もし、被相続人が遺言を残していれば、遺言に従って、分割されます。もし、遺言がなければ、原則として相続人同士の話し合いによって、遺産分割を行います。

     

     

    相続できるのは誰なのか
    被相続人の財産を誰が引き継ぐかは、遺言があるかどうかで変わってきます。遺言があれば、原則として、その内容にしたがって、財産を分けることになります。

    遺言がない場合は、民法に定められたルールによって相続人が決定されます。

    民法上、被相続人の財産を相続できる権利がある人を【法定相続人】と呼びます。

     

    相続人は一定範囲の親族となります。
    1)配偶者

    2)子供などの直系卑属

    3)親などの直系尊属

    4)兄弟姉妹(場合によっては甥や姪)


    1)を配偶者相続人
    2)~4)を血族相続人と言います。

     

    卑属とは被相続人の子どもや孫など下の世代のことを言い、尊属とは親や祖父母など上の世代のことを言います被相続人のおじやおば、いとこは、相続人にはなれません。

     

    相続人には優先順位がある
    前述の1)~4)の人たちが法定相続人となりますが、すべての人が同時に相続人になるのではありません。

     

    配偶者相続人、すなわち妻または夫は常に相続人となります。しかし、血族相続人には順位があります。
     

    その順位の最上位の人だけが相続人になります。その順位は次の通りです。
     

    第一順位・・・子ども
    第二順位・・・直系尊属
    第三順位・・・兄弟姉妹
    例えば、被相続人に子どもがいる場合は、配偶者と子どもだけが相続人となります。

     

    子どもがいない場合には、第2順位の親などに相続の権利が移り、親などもいない場合には、第3順位の兄弟姉妹に相続の権利が移ることになります。

    【遺言は法律上も尊重されるます】

    遺産分割の焦点は遺言があるか、無いかです。遺言とは、被相続人の生前の意思を尊重し、亡くなった後にその意思を反映して遺産の分割を実現させる制度です。遺言は法律で定められた形式があり、書面にして残さねばなりません。


    遺言に書かれた内容は法律上も尊重されます。

    また、遺言があれば、法律で定められた相続人以外にも財産を渡すことができます。これを遺贈と言います。

    【財産を誰が引き継ぐかは、遺言があるかどうかで変わってきます】

    遺言がない場合は、民法に定められたルールによって相続人が決定されます。

    民法上、被相続人の財産を相続できる権利がある人を【法定相続人】と呼びます。

    相続人は一定範囲の親族となります。

    1)配偶者

    2)子供などの直系卑属

    3)親などの直系尊属

    4)兄弟姉妹(場合によっては甥や姪)


    1)を配偶者相続人
    2)~4)を血族相続人と言います。

     

    卑属とは被相続人の子どもや孫など下の世代のことを言い、尊属とは親や祖父母など上の世代のことを言います被相続人のおじやおば、いとこは、相続人にはなれません。

    相続人には優先順位がある

    前述の1)~4)の人たちが法定相続人となりますが、すべての人が同時に相続人になるのではありません。
     

    配偶者相続人、すなわち妻または夫は常に相続人となります。しかし、血族相続人には順位があります。
     

    その順位の最上位の人だけが相続人になります。その順位は次の通りです。
     

    • 第一順位・・・子ども
    • 第二順位・・・直系尊属
    • 第三順位・・・兄弟姉妹

    例えば、被相続人に子どもがいる場合は、配偶者と子どもだけが相続人となります。

    子どもがいない場合には、第2順位の親などに相続の権利が移り、親などもいない場合には、第3順位の兄弟姉妹に相続の権利が移ることになります。

    【相続の範囲はどこまでですか?】

    胎児や養子、非嫡出子も法定相続人になる。

    妻が妊娠中に夫が亡くなってしまうなど、子どもが胎児のときに相続が発生するケースもあります。

    この場合、その後、死産とならず、無事に子どもが生まれれば、相続人になります。


    養子については実子同様の相続権があります。ただし、養子の人数が多い場合、相続税の計算上では一部の養子を法定相続人の「数」に含められないことになっています。(実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人まで含めることができる)

    これはあくまでも相続税の計算上の話です。養子が何人いても、子どもとして被相続人の財産を相続することはできます。

     

    また、婚姻関係のない相手との間にできた子ども(非嫡出子)については、認知した子どもであれば、婚姻関係に関係なく相続できます。認知は被相続人が生前に行っている場合はもちろん、遺言による認知でも大丈夫です。

     

    孫が代わりに相続することもある

    相続による財産移転は、親から子へ、子から孫へと直系の親族によって代々受け継がれていくのが基本です。


    ただ、不幸にして子どもが親よりも先に亡くなるということもあり得ます。


    この場合、その亡くなった子どもに子どもがいる場合、つまり被相続人の親から見ると、孫がいる場合には、孫が代わりに相続することになります。

    これを【代襲相続】と言います。そして、このように代わりに相続する人のことを【代襲相続人】と言います。

     

    代襲相続は、子どもと兄弟姉妹のみに認められている制度です。ただし、違いもあるので注意が必要です。


    代襲相続において、子どもの代襲相続は孫も亡くなっていたとすると、曾孫にというように、直系卑属がいる限り続きますが、兄弟姉妹の代襲は、兄弟姉妹の子ども(甥、姪)の一代限りとなります。

     

    事実婚の場合は、相続人になれない

    昨今は、婚姻届けを出さずに同居している事実婚の夫婦も増えています。事実婚でも、一定の条件を満たせば、遺族年金がもらえることもでき、社会保障の面では、昔よりも権利が認められるようになっています。

     

    しかしながら、民法ではこうした内縁の妻や夫は配偶者として認められておらず、残念ながら、相続人になることはできません。

     

    ただし、法律上の婚姻関係のない男女の間にうまれた子ども(非嫡出子)でも、認知された子どもであれば相続の権利があります。

    【相続の割合はどうやって決めるのですか?】

    相続人が確定したら誰がどの財産をどんな割合で相続するかを決めなくてはなりません。

     

    財産をどう分けるかは、遺言があるかどうかで変わります。遺言があれば、その内容に基づいて財産を分け、遺言がなければ相続人同士の話し合いによって分けます。

    この話し合いを【遺産分割協議】といい、相続する割合のことを【相続分】と言います。

    ただ、話し合いで相続分を決めるのは、なかなか難しいのが現実です。実際には、親子や兄弟姉妹であっても、価値観が違っていたり、置かれている経済状況が違っていたり、あるいは元々の人間関係などが関係してきます。

     

    そのため、話し合いによって、全員が納得するように分けるのは難しいのが現実です。

    そこで民法は、誰がどのような割合で相続できるのかという目安を定めています。この民法で定められた相続の割合のことを、【法定相続分】と言います。
     

     

    相続を決める手順のまとめ

    1)死亡(相続開始)

    遺言がある

    遺言通りにする

    相続人の意思を汲み、遺言通りの相続分にするのが原則。ただし、相続人全員の合意があれば、話し合いで決めても良い。

    (ただし、遺留分という相続人が最低限相続できる割合があります。基本は相続人全員で遺産の1/2、相続人が父母など直系尊属だけの場合は、相続人全員で1/3です。兄弟姉妹には遺留分はありません)

    遺産分割協議成立

     

    2)死亡(相続開始)

    遺言なし

    法定相続分をもとに話し合う

    法定相続分を目安に、相続人同士の話し合いで決める。相続人全員が合意するまで話し合う(遺産分割協議)。

     

    目安としての法定相続分

    法定相続分は以下の通りです。

    1)配偶者のみ

    《配偶者 全部》

    配偶者が一人ですべて相続する。

     

    2)配偶者と子ども

    《配偶者 1/2》《子ども1/2》

    子どもが複数いれば、2分の1を子どもの数で等分。

    例えば、子どもが二人であれば、配偶者が1/2、子どもが1/4ずつとなる。

     

    3)配偶者と親

    《配偶者 2/3》《親 1/3》

    両親共に健在の場合は、1/3を父母二人で等分。

     

    4)配偶者と兄弟姉妹

    《配偶者 3/4》《兄弟姉妹 1/4》

    兄弟姉妹が複数いれば、1/4を兄弟姉妹で等分。

     

    5)子どものみ

    《子ども 全部》

    子どもが複数いれば子どもの数で等分。

    例えば、子どもが二人ならば、1/2ずつ。

     

    6)親のみ

    《親 全部》

    両親共に健在の場合は、父母で1/2ずつ。

     

    7)兄弟姉妹のみ

    《兄弟姉妹 全部》

    兄弟姉妹が複数いれば、兄弟姉妹の数で等分。

     

    上記の民法の定めは、あくまでも目安です。法定相続分は、相続人の公平さを保つために定められたものではありますが、一方で画一的でもありますので、実情にそぐわない場合もあります。

     

    そのため、相続人全員が納得していれば、法定相続分通りに相続をしなくても、全く問題ありません。話し合って決まった内容を遺産分割協議書に記し、全員が署名、押印すれば、法定相続通りではなくても、相続割合は決定します。

    ただ、何度話し合いをしても相続分が決まらない場合には、家庭裁判所へ調停を申し立て、第三者を介して、遺産分割協議を進めることになります。

     

    法定相続分の割合の例

    <ケース1 妻と子どもが相続する>

    父(夫)(死亡:被相続人)

    母(妻)1/2

    長男  1/4

    長女  1/4

    【終活と相続のアドバイス】相続の割合はどのように決めるか

    【遺言書と法定相続人どっちが優先なのか?】

    法定相続よりも優先されるのが、遺言による相続です。

     

    遺言は、一般的には「ゆいごん」と読まれますが、正式に言うと、法律上は「いごん」と読まれます。法的に言うと、遺言とは被相続人の最終の意思表示のことを指します。被相続人の最終の意思表示とは、要するに、自分の死後に生じることになる財産の処分等の法律行為に対しても、自分の意思表示の効力を及ぼすことができるということです。

    その最終の意思表示である遺言を、書面にしたものが、「遺言書」です。遺言書に何を書くかは、その人の自由ですが、一定の内容については、法的効力を持ちます。これを【遺言事項】と言います。遺言事項には、大きく分けると

    1)相続に関すること
    2)相続以外の財産処分に関すること
    3)身分に関することなどです。

    以下にまとめています。

    1)相続に関すること
    ・法定相続分と異なる相続分の指定
    ・誰に何をあげるか等、遺産分割方法の指定
    ・相続人の排除とその取り消し
    ・特別受益の持ち戻しの免除
    ・遺留分減殺方法の指定

    2)財産の処分に関すること
    ・相続人以外の人へ財産を譲る指示(遺贈)
    ・特定団体などへの寄付の意思表示

    3)身分に関すること
    ・婚姻関係のない相手との子どもの認知
    ・未成年者の後見人や後見監督人の指定

    4)その他
    ・祭祀承継者の指定
    ・遺言執行者の指定
    たとえば、1)の相続に関することとしては、法定相続分とは違う相続分を指定できます。妻と子ども1人が相続人の場合、法定相続分通りだと相続分は2分の1ずつですが、「妻には3分の1、子どもには3分の1」という遺言を残せば、その割合になります。

    また、「自宅は妻に、株など有価証券は長男に、現預金は次男に」のように、誰に、どんな財産を分けるかを具体的に指定することもできます。

    2)の内容としては、例えば、お世話になった知人など、法定相続人以外に財産を分けることができます。遺言によって、法定相続人以外の人に、財産を渡す場合は、相続とは言わず【遺贈】と言います。

    3)の内容としては、子どもの認知や未成年後見人の指定などができます。本来、自分の財産の処分方法は、本人の自由であるはずです。そこで、遺言によって故人の意思が表明されれば、その内容を尊重するのが、原則となります。法定相続分よりも遺言が優先されるのは上記の理由によります。しかし、遺言に納得できない時には、相続人全員の合意があれば、遺言の分け方を変えることも可能です。ただし、1人でも合意しない者があれば、遺言が優先されることになります。また、遺贈がある場合も、遺言は優先されます。相続は多数決では決まらないということです。


     

     遺言でどのように指定するのか

    遺言で相続分を指定する場合は、
    1)相続人全員の分を指定する方法と
    2)一部の相続人の分だけを指定する方法があります。

    2)の場合、指定されなかった相続人については、残りの財産を、法定相続分を目安にして分けるのが基本です。

    【遺言書と法定相続人どっちが優先なのか?】

    遺贈と死因贈与の違い

    <遺贈>

    ◎財産をもらう人の範囲◎

    誰でも良い

     

    ◎課税される税金◎

    相続税

     

    ◎負担付◎

    負担(条件)を付けられる

     

    ◎遺留分との関係◎

    遺留分の影響を受けるので、遺留分は発生する

     

    ◎双方の合意◎

    必要ない。遺贈を受ける人(受遺者)の承認は必要なく、遺贈者の一方的な意思で財産を渡せる。

     

    ◎財産の移転方法◎

    遺贈者が遺言書に記しておく。民法に定められた遺言の方式である必要がある。

     

    ◎効力の発生時期◎

    遺贈者が死亡したとき。

     

    ◎撤回◎

    効力が生じるまでは、遺贈する人がいつでも撤回できる。

     

    ◎相続放棄◎

    できる

     

    ◎不動産登記と権利保全◎

    仮登記はできない。遺贈者の死後に所有権移転登記を行う。

     

    ◎登録免許税◎

    相続人・・・0.4%、相続人以外・・・2%

     

    ◎不動産取得税◎

    相続人・・・非課税

    相続人以外・・・3%、又は4%

     

    <死因贈与>

    ◎財産をもらう人の範囲◎

    誰でも良い

     

    ◎課税される税金◎

    相続税

     

    ◎負担付◎

    負担(条件)を付けられる

     

    ◎遺留分との関係◎

    遺留分の影響を受けるので、遺留分は発生する

     

    ◎双方の合意◎

    必要あり。贈与を受ける人(受贈者)の承諾が必要。贈与者と受贈者との契約によって可能となる

     

    ◎財産の移転方法◎

    贈与者と受贈者が生前に契約する。契約書の書式に決まりはない。

     

    ◎効力の発生時期◎

    契約した時から権利義務が発生する。効力の発生は贈与する人が死亡した時。

     

    ◎撤回◎

    撤回できる。ただし、負担付死因贈与契約の場合で、贈与を受ける人が既に負担を履行している場合は撤回できない。

     

    ◎相続放棄◎

    契約のため、一方的な放棄はできない。

     

    ◎不動産登記と権利保全◎

    贈与者の生前に仮登記ができるので、もらう人は自己の権利を保全できる。

     

    ◎登録免許税◎

    2%(誰でも)

     

    ◎不動産取得税◎

    3%、又は4%(誰でも)

     

    ※【生前贈与】

    生前贈与とは、その名の通り『生きている間に財産を誰かに贈る』法律行為です。贈与は基本的にいつでも、誰にでもできます。ただし、沢山のルールがあるので、注意が必要です。

    【遺留分とはなんですか?】

    財産は、遺言があれば遺言通りに分けるのが原則です。しかし、たとえ遺言が残されていたとしても、100%故人の思い通りになるわけではありません。

     

    例えば、「愛人に全財産を譲る」というような極端な内容の遺言は、他の相続人は理不尽だと感じるかもしれません。残された家族が生活に困ることもあるかもしれません。

     

    そこで、民法には、遺留分というものが定められています。遺留分とは、相続人が最低限相続できる割合のことです。

     

    つまり、「全財産を愛人に譲る」というような内容の遺言があっても、相続人はその愛人から決めれた金額を返してもらうことができます。それは、仮に相続人の中の一人が遺産を独占する遺言でも同じです。

     

    遺留分は第3順位の相続人(兄弟姉妹やその甥・姪)には認められていません。そのほかの相続人の場合、基本は相続人全員で相続財産の2分の1、相続人が父母など直系尊属だけの場合は、相続人全員で相続財産の3分の1となります。

     

    相続財産だけでなく、生前に贈与された財産も一部遺留分の対象になります。

     

    遺留分の割合のまとめ

    1.兄弟姉妹

    遺留分なし

     

    2.直系尊属のみ(親や総父母など)

    相続人全員で1/3

     

    3.上記1、2以外

    相続人全員で1/2

    1)配偶者のみ

    配偶者が1/2

    2)配偶者と子ども

    配偶者1/2  子ども1/2

    3)配偶者と親

    配偶者 2/6 親1/6

    4)配偶者と兄弟姉妹

    配偶者 1/2 兄弟姉妹 0

    5)子どものみ

    子ども 1/2

    【侵害された遺留分を取り戻すことはできるのでしょうか?】

    相続人の家族の相続分が遺留分に満たない状態を【遺留分の侵害】といい、最低限もらえる遺留分を取り戻す権利のことを【遺留分減殺請求権】と言います。

     

    この権利を行使したい場合は、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったと知った時から1年以内に行使する必要があります。

     

    遺留分を侵害されていることを知らなかった場合でも、相続開始のときから10年経過すれば、遺留分減殺請求権を行使できなくなるので、注意が必要です。

     

    遺留分減殺請求権を行使するには、侵害されている側が一方的に意思表示すればよいことになっています。

     

    法的には口頭でもかまいませんが、後にきちんと証明できるようにするために配達証明付き内容証明郵便で通知するのが賢明です。

     

    相手が応じない場合は、家庭裁判所の調停などを利用して解決を図ることになります。

     

    遺留分が侵害されていても、「それでもかまわない」ということであれば、遺言通りに相続が行われます。この場合、手続きは必要なく、減殺請求をせずにそのままにしておくだけです。

    【遺留分をあらかじめ放棄してもらうことはできるのでようか?】

    遺留分をあらかじめ放棄してもらうこともできます。

    特定の相続人などに財産の多くを残したいという場合、被相続人が生きているうちに、推定相続人(相続が開始した場合に相続人となる人)に遺留分を放棄してもらう方法があります。

    遺留分の放棄は、家庭裁判所に申立てをして許可を得ます。そのうえで、遺言書を作り、相続させる財産と相手を指定しておけば、特定の相続人に確実に財産を残せます。

    とはいえ、推定相続人に遺留分を放棄することに納得してもらえなければ、この方法は使えません。生命保険金による代償金を準備して他の相続人にある程度の金銭を支払えるようにするなどして遺留分に備える方法もあります。

    【生前に贈与された財産はどうなりますか?】

    【生前に「贈与」という形で子どもに援助をすることも良くあります。


    例えば、長女にはマイホーム購入資金を援助する、長男の開業資金を援助するというケースがそれにあたります。


    このような相続人への生前の贈与は、遺産の前渡しとみなし、その贈与分も相続財産にプラスして遺産分割を行います。被相続人の死亡時の財産だけで単純に分割すると、贈与を受けた者と、そうでない者との間における取り分に不公平が生じるからです。


    これを【特別受益の持ち戻し】と言います。そして、特別な贈与を受けた相続人を【特別受益者】と言います。特別受益の持ち戻しをした結果、相続分がゼロ又はマイナスになることがあります。

    【特別受益とはなんですか?】

    贈与とは、財産をタダで他人に与えることです。このように、相続人が被相続人からの遺贈や贈与によって取得した財産を【特別受益】といいます。


    ただし、特別受益にあたる贈与は、相続人の婚姻、養子縁組、生活資金(生計の資本)を目的とする贈与だけです。これに対し、遺贈は目的を問わず特別受益に当たります。また、特別受益を受ける側の人(特別受益者)は、必ず相続人でなければなりません。相続人でない親族や相続放棄した人などが、被相続人から遺贈や贈与を受けても、それは特別受益にあたりません。

    【特別受益にあたる財産とはどんなものですか?】

    特別受益にあたるものは以下の通りです。

     

    1)結婚や養子縁組のための贈与
    持参金、嫁入り道具、支度金など。結納金や挙式費用は原則含まれません。


    2)生計の資本としての贈与
    住宅の購入資金、不動産の贈与、海外留学などの高額な学費、事業の資金援助、事業承継のための株式の贈与など。通常のお小遣いや生活費、学費は含みません。


    3)遺贈で取得した財産
    遺産分割前の財産の先取りと言えるので、相続人への遺贈はすべて特別受益にあたります。前述のように、通常の生活費やお小遣いなどは含まれません。


    ただ、明確な基準はないので、何が特別受益に含まれるのかは、用途や金額のほか、各家庭の資産や生活の実態なども含めて総合的に判断します。


    なお、特別受益は相続人に対するものだけが該当します。第三者への贈与や遺贈は特別受益にあたりません。特別受益を考える上で、注意が必要なのは、贈与時の価値ではなく、相続開始時の価値で計算するということです。


    不動産や株式など価額変動の大きい財産を持っている場合、大きく値上がりしていると、相続時の取り分が減ってしまうばかりか、他の相続人の遺留分を侵害してしまう可能性もあります。また、贈与された不動産や株式を売却していても、現物があるものとして計算します。購入資金を出してもらった住宅を既に売却してしまった場合も同様です。

    この場合、基本的にはもらい過ぎた分を返す必要はありませんが、遺留分を侵害している場合には、その分を返還する可能性も出てきます。

    【看護などの貢献の度合いを相続にプラスできますか?】

    貢献の度合いに応じた相続分をプラスできます。

    生前、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人には、遺産分割による相続分に加えて、その貢献の度合いに応じた相続分をプラスできます。この増加分が寄与分です。

    法定相続分に沿って相続を行うと、自営業者の親の仕事をずっと無償で手伝ってきた長男と、そうではない次男も同じ割合で財産を相続することになります。親の財産形成への貢献度に関係なく、2人がもらえる金額が同じではバランスが悪いと言えます。寄与分も特別受益と同様に相続人の不公平を是正するための制度です。

     

    寄与分は、おもに次のような相続人が対象になります

    1)被相続人の事業に関する労務の提供をした人
    2)被相続人の事業に関する財産上の給付をした人
    3)被相続人の療養看護をした人
    ただし、この3つのいずれかに当てはまれば寄与分を認められるというわけではありません。例えば、相続人がつきっきりで療養看護をすることで、医療費や看護費用の支出を避けることができたなど、相続財産の維持や増加に貢献していなければならないのです。

    尚、寄与分は相続人にしか認められていません。したがって、相続人ではない叔父や叔母などが事業の資金援助などの貢献をしたとしても、寄与分を主張することはできません。ただし、相続人と同一視できる事情や身分関係(配偶者など)がある場合は、相続人の寄与行為として認められる場合があります。

    【相続は放棄できるのですか?】

    相続放棄は、相続財産のすべてを相続しない相続人各人が家庭裁判所に申述の必要。

     

    相続が発生した場合、相続人は、不動産、現金、預金などのようなプラスの財産(【積極財産】といいます)ばかりではなく、借金、家賃、売買代金などのようなマイナスの財産(消極財産といいます)もあわせて相続しなければなりません。これを【包括承継】といいます。

     

    もっとも、民法では相続人に対して、相続財産(被相続人の財産のこと)を相続するのかどうか、どの程度の相続財産を相続するのか、を選択することを認めています。相続人が選択することができる方法として、【単純承認】【限定承認】【相続放棄】の3種類があります。

     

    単純承認はすべてを相続する方法である
    単純承認とは、被相続人の積極財産も消極財産もすべて相続することをいいます。消極財産の方が多い場合は、相続人が自分の財産を用いて弁済(お金を支払ったり、物を引き渡したりすること)する必要が生じる点に注意が必要です。原則として、相続人が単純承認をするという考えを示すことによって、単純承認が成立します。

     

    ただし、相続人が一定の行為をすることによって、単純承認をしたのと同じ効果が生じる場合があります。これを法定単純承認といいます。法定単純承認が生じる「一定の行為」として、主に以下の3つの行為が挙げられます。

     

    1)相続財産の全部あるいは一部の処分行為

    相続人が相続財産を処分した場合は、相続財産を自分の財産であることを相続人自身が認めたと判断できるからです。相続財産の処分にあたる行為として、被相続人の不動産を第三者に売却する行為や、被相続人が貸していた金銭の返済を求める行為などが挙げられます。

     

    ただし、被相続人の建物の損壊部分を修理する行為などは、保存行為(財産の現状を維持する行為のこと)に当たるので、処分行為には当たらず、法定単純承認は生じないと考えられています。

     

    2)熟慮期間の経過

    相続人が後述する熟慮期間内に、相続放棄や限定承認をするという考えを示さなかった場合も、法定単純承認が生じます。

     

    3)相続財産の隠匿や消費など

    相続人が相続放棄や限定承認の考えを示していても、相続財産の全部あるいは一部を隠したり(隠匿)、自分の思うままに消費したりした場合なども、法定単純承認が生じます。

     

    限定承認は相続人全員で行うことが条件である
    限定承認とは、積極財産の限度において消極財産を弁済するという条件の下で、相続を承認することを言います。限定承認は、自分のために相続があったことを知った時から3カ月以内(後述する熟慮期間のことです)に、家庭裁判所に対する限定承認の申述(申し立てて述べること)によって行うことが必要です。

     

    限定承認については、必ず相続人全員が共同して行わなければならない点に注意を要します。そのため、一部の相続人に法定単純承認が生じた場合や、単純承認をした相続人がいる場合は、限定承認ができなくなります。

     

    これに対し、一部の相続人が相続放棄をしたにとどまる場合は、残りの相続人全員で限定承認を行うことができます。

     

    限定承認を検討した方が良いのは、被相続人が積極財産と消極財産の両方を持っているが、どちらが多いのかをすぐに確定することができない場合です。積極財産の限度で弁済すれば良いので、もし消極財産のほうが多いことが明らかになっても、相続人は不足分を自分の財産を用いて弁済する必要がありません。

     

    更に、消極財産をすべて弁済した後に積極財産が残った場合、相続人はその積極財産を相続できるという点も、限定承認のメリットとして挙げられます。

     

    そして、家庭裁判所で限定承認が受理されると、限定承認をした相続人(相続人が複数のときは申述の受理と同時に選任された相続財産管理人)が、相続財産の清算手続きを行います。

     

    相続放棄は相続の全面拒否である
    相続放棄とは、相続人が被相続人の相続財産の相続を全面的に拒否する行為をいいます。相続放棄は、自分のために相続があったことを知った時から3カ月以内(後述する熟慮期間のことです)に、家庭裁判所に対する相続放棄の申述によって行うことが必要です。

     

    家庭裁判所が相続放棄の申述を受理することで、申述をした相続人は、その相続に関して、最初から相続人でなかったものと扱われます。

     

    相続放棄については、限定承認とは異なり、1人で行うことができます。一部の相続人に法定単純承認が生じた場合や、単純承認をした相続人がいる場合でも、相続放棄をすることは可能です。

     

    相続人が相続放棄を行うと、他の相続人の法定相続分が変動する場合があります。たとえば、夫が死亡して、相続人として妻と子1人がいたとした場合、妻の法定相続分は2分の1、子1人の法定相続分は2分の1です。

     

    しかし、子が相続放棄をした場合、他に相続人がいなければ、妻がすべての相続財産を相続します。もし、夫の両親がいたとすれば、子の相続放棄後は、妻の法定相続分が4分の1(父母がそれぞれ8分の1を相続します)

     

    このように、相続放棄によって相続人の資格を新たに取得する血族が生じる場合もあるなど、相続放棄は他の相続人への影響が大きい行為だといえます。

     

    どのような手続きをするのか
    相続人が、これまで述べた単純承認、限定承認、相続放棄のどれかを選択することができるのは、被相続人が死亡して相続が開始した後です。相続開始前にこれらの行為をすることはできません。

     

    そして、どの行為をするのかを考える期間として、民法では、自分のために相続があたことを知った時から3カ月以内という制限を設けています。この期間制限を熟慮期間と呼ばれています。

     

    ここで「自分のために相続があったことを知った時」とは、被相続人の死亡により相続が開始することと、自分が相続人になることの両方を認識した時点を指すと考えられています。

     

    相続人がどの行為をするのかを示さずに熟慮期間を経過すると、単純承認をしたと扱われます(法定単純承認)。限定承認や相続放棄をする相続人は、熟慮期間の経過前に、家庭裁判所に申述をすることが求められます。

     

    相続財産の調査などに時間がかかり、熟慮期間の経過前に限定承認や相続放棄をするための判断資料を得られない時は、必ず家庭裁判所に「期間の伸長の申立て」をしなければなりません。

     

    単純承認・限定承認・相続放棄のまとめ
     

    【単純承認】 相続人は相続財産すべてを相続する

     

    【限定承認】 相続人は積極財産の範囲内で消極財産を弁済する

    相続人全員で家庭裁判所に申述の必要あり

     

    【相続放棄】 相続人は相続財産のすべてを相続しない

    相続人各人が家庭裁判所に申述の必要

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