【終活】【相続】所有者不明土地問題とその対策を考えよう

LINEで個別相談 お問い合わせはこちら

[営業時間] 9:00 〜 18:00 / [定休日] 土,日,祝

相続・終活マガジン

【終活】【相続】所有者不明土地問題とその対策を考えよう

2021/05/07

目次

    「所有者不明土地」対策のための民法、不動産登記法などの改正案が国会で4月21日に成立しました。所有者不明土地は誰が所有しているのかがわからない土地で、相続の際に親の家や土地の名義変更をせず、長年の放置などで発生します。改正法は相続開始から3年以内の登記を義務付けるほか、相続開始から10年過ぎると原則として法定相続分で分けることなどが柱で、2023年から順次施行します。

     

    しかし、改正法の成立前から、政府の動きはすでに始まっています。「長期間相続登記等がされていないことの通知」が発送されています。全国で、この通知書を受け取られて驚かれている方も多くなっています。

     

    この「長期間相続登記等がされていないことの通知」は、国が30年以上相続登記がされていない土地の相続人を調査し、法定相続人のうち任意の一部の方に、相続登記を促す通知書です。

     

    国は2018年から「長期相続登記等未了土地解消作業」というものを始めています。2021年時点で約5万3000人の相続人が判明しました。

     

    通知を受け取った人だけでなく、親の家が将来空き家になるのではないかと心配している人は早めに対策を考えた方が良いかもしれません。国会で成立した所有者不明土地対策のための改正民法・不動産登記法などでは、早めに対策を打たないと相続人にとって不利になる内容がかなり含まれています。今回はそれを見てみましょう。

    【3年以内の相続登記が義務化】

    所有者不明土地問題に関連する民法、不動産登記法の改正の中で、特に押さえておきたいのは次の3つです。1つ目は土地・建物の相続登記の義務化です。相続登記は現在任意で申請期限もありませんが、改正により相続開始から3年以内に登記することを義務付けます。

     

    法施行の前に既に相続が発生している場合も基本的に義務化の対象になります。期限内に正当な理由がないのに登記せず、督促にも応じない場合は10万円以下の過料となります。不動産の所有者が住所などを変えた場合も2年以内の登記を義務付け、応じないと5万円以下の過料がかかるようにする方針です。

    過料は刑罰ではなく、行政罰です。また政府はよほどのことがない限り過料は課さない方針ですが、罰則が規定されたことには注意が必要です。

    【誰が相続するのかを10年以内に決めることになる】

    2つ目は遺産分割協議に期間を設けることになった点です。相続では被相続人が亡くなると、相続人の間で「誰が、どの財産を、どれだけ引き継ぐか」を決める必要があります。亡くなった人が遺言で分け方を指定していれば、原則として遺言の内容に沿って遺産を分けます。遺言がない場合は相続人が話し合う「遺産分割協議」で分け方を決めます。

     

    分ける際は民法で定めた「法定相続割合」が目安になります。例えば、相続人が配偶者と子1人なら、ともに2分の1ずつとなります。配偶者と子2人なら配偶者が2分の1、子は4分の1ずつに分けます。法定相続で分けても構わないし、相続人全員が合意すれば法定相続分通りに分けなくても良いです。

     

    ただ、現在は遺産分割協議には法律上の期限は設けられていません。親の家が老朽化したり立地が不便だったりして子が住まず、売却や賃貸も難しい場合は相続先が決まらないまま放置される場合が目立ちます。

     

    そこで改正により、相続開始から10年を過ぎると原則として法定相続割合で分けるようにしました。つまり、相続人が希望しなくても法定相続分の土地を持たされる可能性があります。

    【不要な土地は国が引き取る可能性も】

    3つ目は「土地所有権の国庫帰属制度」の新設。民法改正ではなく、新しい法律を作りました。相続人が不要と判断した土地を国が引き取る仕組みで、相続人は10年分の管理費を払います。売却や賃貸も困難な市場価値の乏しい不動産を抱える相続人のニーズは強いと見られています。

     

    ただ引き取ってもらうには国の審査があります。対象となる土地は更地が条件であるため、建物があれば相続人の負担で解体する必要があります。このほか抵当権が設定されていない、境界争いがない、土壌汚染がないなどの条件を満たすことも求められます。

    【親子での早めの話し合いが重要】

    親の家を長く放置すると不利になりかねないことになります。どのような対策を立てておく必要があるのか。それにはまず、どんな場合に所有者不明土地になる可能性があるのかを理解する必要があります。

     

    典型例は親の家が売ったり、貸したりしにくく、市場価値が乏しいという場合です。さらに「子が別居し、持ち家がある場合は要注意」です。親の家が空き家になっても誰も欲しがらない可能性が大きくなります。

    共有名義で相続する場合も気を付けた方が良いでしょう。共有名義者である子が亡くなると、孫が遺産分割協議をすることになり、孫の段階では協議がまとまらない例が多くなります。改正民法でも共有分割の方法である価額賠償の最高裁判例を明文化するなど対策を講じています。

    【家の修繕で市場価値向上、売却・賃貸も一案】

    対策で重要なのは、まず親子で介護や相続について早めに話し合うことです。話し合いの中で特定の相続人が親と同居したり、近所に住んで面倒を見たりするなどして親の家の相続先が自然な流れで決まる可能性があります。家の市場価値が低い場合でも修繕などで価値を高める機運が生まれてくることも期待できます。

     

    売却や賃貸の可能性を探る場合でも、不動産会社との交渉責任者を決めることも大切です。売却金額や売却時期について特定の相続人に一任しておけば、交渉もより円滑になりやすくなります。やむを得ず共有する場合でも固定資産税などの負担割合を決めておくことが望ましいでしょう。そうでないと、争族問題になりかねません。

     

    もっとも、親が亡くなった後の遺産分割協議が難航する可能性はあるでしょう。親の家を誰が相続するか決まらないうちに相続登記の期限が近づいてくるケースも考えられます。その際に利用を検討したいのが「相続人申告登記制度」です。今回の法改正で制度新設が盛り込まれました。期限までに相続人の誰が、どれだけ相続するか決まらない場合に相続人の氏名、住所などを法務局に申し出る仕組みです。これを受けて法務局が登記をすれば、相続開始から3年が経過しても罰則の対象になりません。

     

    誰も家を継がず、売却・賃貸も難しいなら、土地所有権の国庫帰属制度も選択肢になります。

    【遺産分割協議が長期化なら家裁利用も選択肢に】

    改正民法では遺産分割協議に期間が設定されることも影響は大きくなります。相続人同士が揉めて、遺産分割協議が長引く例が増えています。全国の家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件は過去20年間で1.5倍以上にもなっています。

     

    特に目立つのが、相続人の中に亡くなった人から生前に財産をもらった人がいたり、亡くなった人の介護を一手に担ったりした人がいる場合です。財産の分け方が不公平だとして対立し、話し合いを始めて10年が過ぎても折り合わないケースもあります。

     

    分割協議が長引く大きな原因の一つに特別受益や寄与分の存在があります。特別受益は住宅取得資金、結婚費用、大学の入学金などの生前贈与が代表的な例です。寄与分は亡くなった人の療養看護や介護などで多大な貢献をした場合に認められます。特別受益や寄与分を含めて分ければより公平になりますが、協議に時間がかかったり、対立が深刻になったりしかねないません。

     

    現実的には、まず特別受益があったかどうか、金額がいくらだったかを確認することが困難です。贈与した親はすでに亡くなり、子は贈与を受けたこと自体を認めない例が少なくないからです。寄与分は、介護などをした子は貢献分の金額を多めに見積もって主張する一方、他の相続人は受け入れを渋りがちです。

     

    分割協議が長引くと、亡くなった人の家・土地は長年にわたって放置されやすくなります。そこで、今回の民法改正では遺産分割協議の期間を相続開始から10年間としました。10年を過ぎると原則として特別受益や寄与分を考慮せず、法定相続割合で分けるようにします。

     

    ただし、法定相続割合による遺産分割が不公平になりかねないケースは少なくはないと思われます。やはり、特別受益や寄与分は考慮せざるを得ませんが、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか。

     

    一案が家庭裁判所を利用することです。今回の法改正でも相続開始から10年以内に家裁に申し立てれば、10年を経過しても、特別受益や寄与分を考慮した分割ができるからです。

    家裁は相続人の主張を聞き、調停案を示します。図表は夫が亡くなり、死亡時の相続財産5000万円を妻と長男、長女で分けるケースを示しました。長男は父から生前に1,000万円の贈与を受け、長女は父の介護で多大な貢献をしたため寄与分300万円があります。

     

    単純に法定相続割合で分けると、妻の相続額は2500万円、長男と長女は1250万円ずつになります。しかし、長男は特別受益との合計で2250万円になるのに対し、長女は寄与分があるのに1250万円しか受け取れません。

     

    そこで、特別受益と寄与分を考慮するとどうなるか。まず、死亡時の相続財産に特別受益を加算してから寄与分を差し引き、計算上の修正相続財産額を出します。それを法定相続割合で分け、長男は特別受益を引いて425万円、長女は寄与分を加算して1725万円とします。生前贈与や介護の貢献度を考慮しているため、法定相続割合による分割に比べて公平です。

    【終活で準備を進めておこう】

    所有者不明土地の解消へ向けた一連の法改正に伴い、相続も少なからず影響します。しかし、備えあれば憂いなしの言葉通り、終活を行い、準備をすることで、対策することができます。本記事を参考にしながら、一連の法改正へ向けた準備を進めてみてはいかがでしょうか。これも終活の一環です。

    この記事は終活を考えている人、終活をやっている人のために、参考になればと書かれています。終活について、ご質問、ご相談があれば、お気軽に「終活について教えて欲しい」とご連絡ください。「終活」のアドバイザーがお答えします。あなたの大切な「終活」を充実した「終活」にしていただくために、終活のアドバイスさせていただきます!

    当店でご利用いただける電子決済のご案内

    下記よりお選びいただけます。