【相続】トラブルはなぜ発生するのか
2021/05/31
目次
【相続とは何か】
相続は「人が死亡した場合」に開始されます。相続とは、ある人の財産が他人に受け継がれることを言います。私たちは、生きている間は、自分の意思に基づいて、自分の財産を自由に売却し、あるいは賃貸することができます。しかし、人が死亡すると、その人の手元から離れて、その人の配偶者や子などの親族に受け継がれます。
相続の場面において、死亡した人のことを被相続人といい、被相続人から財産を受け継ぐ人のことを相続人と言います。誰が相続人になるのか(相続人の範囲)については、民法という法律が定めていることから、相続人のことを「法定相続人」と呼ぶこともあります。
【相続人は包括承継をするのが原則】
民法では、相続人は「被相続人の財産に属した一切の権利義務」を承継すると定めています。この民法の定めは、被相続人が置かれていた立場や地位を、そのまま相続人が引き継ぐことを意味します。これを包括承継といいます。不動産・現金・預貯金など、金銭的な価値を持つ物だけを相続するわけではない点に注意が必要です。
たとえば、被相続人がAに建物を貸していた場合、建物の貸主という地位が相続人に承継されるため、相続人が被相続人に代わり、Aに建物を貸し続けなければなりません。また、被相続人がBから借金をしていた場合は、借主の地位が相続人に承継されるため、相続人は被相続人に代わり、借金を返さなければなりません。
ただし、被相続人の一身専属権は、例外的に相続されません。一身専属権とは、その人だけが持つことのできる立場や地位のことを意味します。例えば、この親権者の地位、会社の従業員の地位、著名演奏家としてピアノを演奏する義務などが挙げられます。
相続人としては、相続をする際、被相続人の立場や地位が一身専属権なのかどうかを確認する作業も必要になります。
【何がトラブルの原因になるのか】
相続に関しては、さまざまなトラブルの発生が考えられますが、次の3点に分類することができます。
①相続人は誰かについてのトラブル
父が死亡した時点で、母がすでに死亡しており、相続人が子1人だけで、他に父の兄弟姉妹などの親族も一切いないとします。このケースのように、相続人がすぐに確定するときは、相続人が誰かをめぐってトラブルが発生することはありません。
しかし、被相続人の死亡後に相続人の存在が判明したり、相続人であるはずの人がその資格を失ってしまうなどの事情が発生したときは、相続人が誰かをめぐってトラブルが生じることがあります。
たとえば、父が死亡した時点で、母がすでに死亡しており、相続人が子2人の時は、相続人が子2人に確定するのが原則です。しかし、後から父に婚外子(非嫡出子)がいたことが判明すると、相続人として子が1人増える結果、子2人が相続できる財産が減ります。
また、Aが死亡した時点で、Aに配偶者も子もいなければ、Aの父母が相続人として確定するのが原則です。しかし、後からAに子がいたことが判明すると、相続人はAの子1人になる結果、Aの父母は相続人としての資格を失います。
さらに、相続人が被相続人を殺害して刑罰に処せられたなどの事情があると、相続人としての資格を当然に失います。これを相続欠格と言います。そのため、相続欠格にあたる相続人が存在しないことを前提にして、相続人を確定する作業をすることが求められます。
②遺産を分けるときのトラブル
相続人の範囲が確定できたとしても、とくに相続人が2人以上いる場合(共同相続といいます)には、相続人同士で遺産(被相続人から相続した財産)をどのようにわけるのかという問題が生じます。これが遺産分割の手続きです。
遺産が現金や預金だけの場合は、相続人同士で分けることは比較的簡単です。しかし、遺産の中に不動産や動産(不動産以外の物のことを指します)がある場合、これらは物理的に分割ができないため、どの相続人がどの不動産や動産を取得するのか、そして、不動産や動産を取得しない相続人に対して何らからの取り分(現金や預金など)を認めるか、などの点について問題が発生します。
もっとも、被相続人の遺言がある場合は、遺言書に記載されている内容に従って遺産を分けるので、基本的には遺産分割についてトラブルは生じにくいと言えます。しかし、遺言に何らかの問題があって存在しないとみなされる(無効とされる)こともあり、その時は相続人同士で遺産分割をせざるを得なくなります。
遺産分割は話し合いで解決しなければ、家庭裁判所に調停や審判を申し立てる必要が生じます。そうなると、最終的な解決まで長期期間を要するので、相続人の負担は大きくなると言えるでしょう。
③相続税についてのトラブル
相続人が実際に遺産を取得した場合、基礎控除額を超えると相続税の支払いが必要になります。不動産をはじめ高額な財産を相続したときは、相続税も相当な額になるので、遺産分割にあたっては、相続税の支払いが可能であるのかという観点も忘れないようにします。
【相続したくない場合の選択肢も用意されている】
相続人は、自分の意思にかかわらず、被相続人の権利義務をまとめて承継しなければならないのが原則です(包括承継)。しかし、被相続人が借金ばかりを遺した場合など、相続をきっかけとして、相続人に多大な経済的負担がかかることもあります。相続人としては、借金などの相続はできる限り回避したいところです。
民法では、このような経済的負担の回避を認める手続きとして、相続人としての資格を自ら失わせる相続放棄と、被相続人のプラスの財産の範囲でマイナスの財産(借金など)を承継するという限定承認の制度を設けています。ただ、限定承認は相続人全員で行うという制約がある点に注意を要します。
この記事は相続を考えている人、又は相続の対策を考えている人のために、参考になればと書かれています。相続について、ご質問、ご相談があれば、お気軽に「相続について教えて欲しい」とご連絡ください。「相続」のアドバイザーがお答えします。あなたの大切な「相続」をより良き「相続」にしていただくために、相続のアドバイスさせていただきます!
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