【相続】配偶者の居住の権利

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相続・終活マガジン

【相続】配偶者の居住の権利

2021/08/20

目次

    【配偶者の居住の権利とは】

    2018年の相続法改正により、被相続人(故人)の配偶者の居住権を保護する制度が導入されました。具体的には、配偶者の居住権を長期的に保護する配偶者居住権と、短期的に生活の基盤である住居を奪われることがないようにする配偶者短期居住権の2つがあります。これらの制度は2020年4月1日より施行されました。

    【以前は相続により配偶者の居住権が危うくなっていた】

    たとえば、妻Aが夫Bの生前に、BとともにBが所有する住宅に住んでいた場合を考えてみましょう。Bが死亡した場合、相続人がAだけのときは、Aが住宅の所有権を単独で相続するので、Bの死亡後も問題なく住宅に住み続けることができます。

     

    しかし、夫Bが死亡した時に、妻Aだけではなく子Cも相続人になる場合は、事情が異なってきます。住宅を含めた相続財産は、遺産分割が終了するまでの間、相続人であるACが共同して所有する状態が暫定的に作られます。つまり、相続人が複数いる場合は、生存配偶者以外の人も住宅を所有している状態になります。

     

    このため、被相続人が死亡した時点から、相続人の1人である生存配偶者が、相続財産である被相続人が所有していた住宅に、引き続き居住することが可能であるのか否かが問題になります。

     

    この点については、かつてから被相続人の生存中から、被相続人とともに被相続人所有の住宅に居住していた生存配偶者は、相続発生時点から遺産分割終了までの間、被相続人との間に住宅に関する使用貸借契約(相手方に無償で住宅などの目的物の使用を認める契約のこと)が成立していたものと推定し、相続開始直後の生存配偶者の居住権を保護していました。

     

    しかし、この「使用貸借契約成立の推定」では、生存配偶者の保護は不十分だといえます。被相続人が、生前から「自分の死後は生存配偶者を住宅に住み続けさせたくない」という意向を示していた場合には、使用貸借契約の成立を推定することができないためです。この推定が認められないときは、生存配偶者が生活の基盤である住宅を失う危険性にさらされることになります。

     

    さらに、使用貸借成立の推定が認められても、生存配偶者の居住権の保護は十分ではありません。使用貸借契約の成立は、遺産分割が終了するまでの生存配偶者の居住権を保護する方策であって、遺産分割協議の結果、生存配偶者とは異なる相続人が住宅を取得することを否定するものではないからです。住宅を取得した相続人が、生存配偶者が住宅に住み続けることを許さない場合、生存配偶者は住み慣れた住宅から立ち退かざるを得なくなります。

    【生存配偶者が住宅を相続した場合も問題がある】

    複数の相続人間による遺産分割の結果、被相続人が所有していた住宅を生存配偶者が取得することになった場合、生存配偶者は、引き続き住宅に住み続けることができます。しかし、住宅以外の財産を相続することが困難になるという問題が生じます。被相続人が所有していた住宅は不動産ですから、一般的に価値が高いものです。このような価値が高い不動産を取得すると、それだけで生存配偶者が持っている法定相続分に達してしまい、現金や預貯金債権など、他の相続財産を取得することが難しくなるからです。

     

    相続の制度は、被相続人の死亡後の相続人の生活保障という機能も持っていることから、住み慣れた住宅は確保できたものの、それ以外の生活の糧を手に入れることができなければ、とくに生存配偶者が高齢であればあるほど、酷な結果になることになりかねません。

    【配偶者居住権は長期的な居住権保護が目的】

    2018年の相続法改正により新設された配偶者居住権は、生存配偶者に対して、被相続人が所有していた建物(住宅)に、原則として終身の間、無償で住み続ける権利を保障する制度です。

     

    配偶者居住権が成立するためには、相続が開始した時点で、被相続人が所有していた建物に生存配偶者が住んでいたことが必要です。被相続人と同居していなくてもかまいません。その上で、次の①~③のどれかの事実があるときに、配偶者居住権が成立します。

     

    ①生存配偶者に配偶者居住権を取得させる遺産分割協議が成立した。

     

    ②生存配偶者に配偶者居住権を取得させる被相続人との死因贈与契約(死亡時に効力が生じる贈与契約のこと)があった

     

    ③生存配偶者に配偶者居住権を取得させるとの遺贈があった

     

    配偶者居住権の成立が認められた生存配偶者は、配偶者居住権を登記することによって、第三者に自分が配偶者居住権を持っていることを主張できます。一方、配偶者居住権を他人に譲渡することはできない他、建物の使用収益についても、一定の制約を受けます。

     

    配偶者居住権が認められることで、生存配偶者は、引き続き住宅に住むことができるとともに、他の財産を相続することができる可能性が広がります。つまり、配偶者居住権が認められた生存配偶者は、建物の居住権の他に、生活に必要な現金や預貯金債権といった、他の財産を取得することも可能になるのです。

    【配偶者短期居住権は短期的な居住権保護が目的】

    配偶者短期居住権とは、相続開始時点から比較的短期間の間、被相続人が所有していた建物(住宅)に、生存配偶者が住み続けることを認める権利です。配偶者短期居住権を取得するための要件は、相続が開始した時点で、被相続人が所有していた建物に、生存配偶者が無償で住んでいた状態が認められることです。被相続人と同居していなくてもかまいませんが、お金を払わずに住んでいたことが必要です。

     

    配偶者短期居住権の成立が認められると、生存配偶者は、①遺産分割によって生存配偶者以外の人が建物を取得すると決まった日、②相続開始時点から6カ月を経過する日、のどちらか遅い日までの間、建物に無償で住み続けることができます。生存配偶者は、最終的に建物から立ち退かなければならない場合でも、配偶者短期居住権の主張によって、被相続人の死亡後、ただちに立ち退く必要がなくなります。

     

    配偶者短期居住権は、上記の要件を満たせば、被相続人の意向に関係なく成立します。被相続人が「自分の死亡後に、生存配偶者が自分の建物に住み続けることを拒否する」と示していても、配偶者短期居住権は認められるのです。なお、配偶者短期居住権の場合も、譲渡が認められない他、建物の使用について、一定の制約を受けます。


    この記事は相続を考えている人、又は相続の対策を考えている人のために、参考になればと書かれています。相続について、ご質問、ご相談があれば、お気軽に「相続について教えて欲しい」とご連絡ください。「相続」のアドバイザーがお答えします。あなたの大切な「相続」をより良き「相続」にしていただくために、相続のアドバイスさせていただきます!

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