【相続】特別受益者・寄与分って?

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相続・終活マガジン

【相続】特別受益者・寄与分って?

2022/10/24

目次

    【特別受益者って何?】

    民法では、被相続人の生前に特別受益を受けた共同相続人を特別受益者といい、この受けた特別受益については、共同相続における相続分について考慮されています(民法第903条第1項)。被相続人の生前に被相続人より特別に贈与等の受益を相続分の算定で考慮しなければ、他の相続人との間での不平等が生じることから、これを調整するための制度であり、共同相続人間の実質的平等を図るための制度とされています。

     

    具体的には、特別受益者は相続分の算定において、相続財産の全体として特別受益を含めて計算し、各自の具体的相続分の計算においてこの特別受益を控除することされています(民法第903条第1項)。

     

    この特別受益とされるのは、被相続人から相続人に対して「遺贈」された財産、及び婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として「贈与」された財産をいいます(民法第903第条第1項)。したがて、遺贈や養子縁組に伴う贈与のほか、学費や住宅購入のために援助等を受けていた場合は生計の資本として「贈与」されたものとして扱われるので、相続における具体的相続分の計算においてこれらを考慮する必要があることに留意が必要となります。

    【寄与分って何?】

    被相続人と共同しての経営に従事してきた共同相続人のように、共同相続人の中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の貢献をした者がいる場合に、このような貢献のない他の共同相続人と同等に取り扱い、法定相続分どおりに被相続財産を分配するのは、実質的に衡平を失することになります。そのような場合において共同相続人間の衝平を図るために、共同相続の場合に、共同相続人のうちに、被相続人の生前に被相続人の財産の維持又は増加について特別な寄与をした者がいる場合は、これを寄与分として考慮する制度があり(民法第904条の2)、これを寄与分といいます。具体的には、相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって、寄与分相当金額についてこの者に有利に具体的相続分を計算することとなっています。

     

    もっとも、寄与分が遺産分割における相続分の修正要素とされていることから、本条では、寄与分を受けることができる者は相続人に限定されています(民法第904条の2第1項)。すなわち、相続人ではない者(たとえば相続人の配偶者や子、事実上の養子、内縁の配偶者など)は、共同相続人になれず遺産分割にも参加できない以上、自らの寄与分を主張することはできません。

    【特別寄与料とは】

    上記のとおり寄与分は相続人に限られている結果、被相続人の配偶者などの相続人以外の者(子の配偶者など)は、被相続人の介護を尽くしても、相続財産の分配を得ることができず実質的な不公平が生じていると批判されていました。そこで、相続人以外の被相続人の親族が療養看護等により「特別の寄与」をした場合、相続開始後、相続人に対して、その寄与に応じた額の金銭の支払を請求できるという制度(特別寄与者制度)が新設されました。

     

    この特別寄与者制度では、被相続人に対して、無償で療養看護その他の労務提供をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした相続人以外の被相続人の親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対して、その寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができることとし(新民法第1050条)、相続人以外の親族の貢献を直接認める制度を設けることにより、実質的な公平を図られることとなりました。なお、特別寄与者制度は、単に一定の要件を満たす場合に金銭的な請求を認めるものであり、対象となる親族に新たな療養看護などについての義務を課すものではないです。

     

    なお、特別寄与料の支払いのためには(1)被相続人の親族であること、(2)無償で、(3)療養看護その他の労務の提供をし、(4)これによって、被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたことが要件とされています。

     

    (1)として、被相続人の「親族」であることが定められています。なお、相続人や相続放棄をした者、相続人の欠格事由に該当する者および排除された者は除外されます。なお、民法上、「親族」とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指し(民法第725条)、内縁の配偶者や事実上の養子などは、「親族」には該当しません。

     

    (2)については、無償性は寄与分制度でも当然の要件と解されていましたが、今回創設された特別寄与者制度では、要件として明文化されました(新民法第1050条)。

     

    さらに、(3)「労務の提供」が要件とされています。これは従前の寄与分制度においては「財産上の給付」「その他の方法」も含む規定となっていることと比較すると、要件が限定されています。療養看護が法令上例示されていますので、事業に関する労務の提供等も「労務の提供」に含まれるといえます。他方で、介護費を負担するような金銭上の給付は含まれないとされる可能性もあります。

     

    (4)「特別の寄与」という要件は、寄与分制度文言が同一です。寄与分制度においては、相続関係を前提として、法定相続分を修正するに値する強い寄与を指し、その者と被相続人との身分関係において通常期待すべき程度の行為含まれないと解されています。

    条文

    民法(親族の範囲)

    第725条次に掲げる者は、親族とする。

     1 6親等内の血族

     2 配偶者3

     3 親等内の姻族

     

    (特別受益者の相続分)

    第903条共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

    2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。

    3 被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

    4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

     

    (寄与分)

    第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

    2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。

    3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

    4 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規定する場合にすることができる。

     

    第1050条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

    2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6箇月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、この限りでない。

    3 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。

    4 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

    5 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

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