【相続】実家の相続を巡ってこんな共有名義トラブルが起こる
2023/03/24
目次
【相続】実家の相続を巡ってこんな共有名義トラブルが起こる
実家の相続で典型的なトラブルは、親の死後、実家に住んでいる相続人と他の相続人の対立です。
例えば、3人の相続人(長男・長女・次男)がいて、実家に長男が住んでいる場合、長男は住んでいるので利益を独り占めしている形になっています。そのため他の相続人との利益の不均衡が生じ、主張の食い違いが出ます。
具体的な事例で見てみましょう。実家の母親が亡くなり、同居していた長男と他の都市に住む長女、次男の3人が相続人になりました。預貯金などの資産があまりなかったため、遺産分割協議で実家は3人が3分の1ずつの持分で相続することとし、3人の共有名義となりました。
特に取り決めはしませんでしたが、その後、固定資産税は長男が払い、他に不動産に関する兄弟姉妹間の金銭のやり取りはありませんでした。長女と次男は家に住む長男が固定資産税を負担するのは当然だと思っていましたし、自分たちはそれぞれ家を構えているので特に長男に金銭的な要求をするつもりもありませんでした。
やがて相続がすんで10年ほどしたとき、次男がリストラにあって転職を余儀なくされました。収入が半減してしまった次男は実家の自分の共有持分が活かされていないことを意識し始め、長男に自分の持分を買い取るか持分に見合う賃料を払うように持ちかけました。
ところが、長男は「お前らに何の負担もかけていないし、固定資産税や家の維持費も俺が全部払っている」と反論してきました。逆に、もうそろそろ固定資産税を3人で負担したらどうかと言い出しました。さらに母親を最後まで面倒見たのは自分たち夫婦だし、長女と次男には父親が生前に住宅資金を援助しているといったことも持ち出してきました。買い取りが希望なら応じるが、身内なのだから相場よりかなり安くしないと買わないとも返答しました。
これに対して次男は、「兄貴は実家に住めたのだから住宅資金もいらなかったし、結婚したとき増築までしてもらっているじゃないか。俺ら夫婦だってできる限り通って介護を手伝ったり、父さんや母さんが入院したときは交代で病院に詰めて看護したりもしている。ちゃんと役割に応じた務めは果たしているのに共有の対価がまったくないのはおかしいだろ」と譲りません。
買い取り価格は相場より安くてもかまわないが、ただ同然のような値段に応じるわけにはいかないと言いま
す。巻き添えを食った長女は、今のままでかまわないけど固定資産税を負担させられるのは納得がいかないと困惑しています。
ここでのいちばんの問題点は、遺産分割協議の時点で共有名義の処理について取り決めして文書にしておかなかったことです。次男がリストラで経済情勢が変わったように、相続時点から時間が経過すると環境が変わることによる不満が表面化することがよくあります。特に、実家に誰か住んでいると持分の利益享受がアンバランスになるので、共有名義は住んでいない親族と対立する爆弾を抱えていることになります。
【実家の売却を巡る食い違い】
実家を売却する場合、全員が合意して第三者に売るケースと相続人の1人が他の相続人から買い取るケースがあります。相続した実家が空き家になる場合は第三者への売却、誰かが住む場合は住むことになる相続人が買い取るのが合理的な処置の仕方です。
第三者への売却は簡単なように見えますが、実は意外とすんなりいかないものです。売ること自体は合意しても、いわゆる「総論賛成、各論反「対」ということに陥りがちだからです。共有者間での主な食い違いには次のようなものがあります。
・売却時期で食い違う
・売却価格で食い違う
・売却金の分配で食い違う
・途中で売却撤回に気が変わる
例えば、すぐに売ってしまいたいと思っても、共有者の1人がせっかくの親の思いが詰まった家なのだからしばらくはそのままにしておきたいということがあります。また、市況価格が上がってもう少し高くなるまで待とうと主張する共有者がいるかもしれません。
売却価格でも、安くてもいいから売りたい、少しでも高く売りたい、目標とする価格でしか売りたくないなどといった食い違いがよく見られます。売却金の分配でも均等割りで納得するとは限りません。例えば、空き家を売却したときに空き家の管理をしてきた共有者が少し取り分を多めにしたいと要望することもあります。
当初は売却に同意していても、時間がたつと気が変わることもあります。共有者の1人が売るより貸したほうがいいのではないかと言い出したり、留学から帰国する子供を住まわせたいと思うようになったといった気持ちの変化や状況の変化が起こりえます。なお、第三者ではなく実家に住んでいる身内の共有者に売る場合でも、買い取り価格でもめるケースが多いのは前述のとおりです。
【リフォームを巡る闘い】
相続人の1人が実家を活用するために勝手にリフォームしてしまうということもあります。例えば、次のようなケースがありました。
両親が亡くなって空き家になった3階建ての実家を子供である3人の姉妹が相続しました。管理は長女が行っていましたが、場所が人通りのある通りに面していたこともあっていつの間にか1階をリフォームして勝手に喫茶店を始めてしまいました。開店後に知らせを受けた次女と三女は驚いて長女に抗議しました。そのうえで、始めてしまったものはしかたがないが、自分たちにも少し対価を払ってほしいと要求しました。
ところが、長女は「自分は3分の1の持分があるのだから好きに使える権利があるはずだ。だから家賃や売上の一部などの対価は払わない」と主張しました。その代わり、「2階と3階を妹たちがどう使おうと口出しをしないし対価も求めない」とも言います。
ここでのポイントは、1階の喫茶店への改造は部分的なリフォームである「管理行為」になりますので、過半数の同意が必要なことです。つまり、2人の妹のどちらかの同意を得なければなりません。勝手にやったのであれば違法行為となり、妹たちは訴訟による損害賠償請求も可能です。
このような勝手なリフォームは空き家だけでなく、住んでいる共有者が行う場合もあります。例えば、長男・長女・次男の共有名義の実家に長男が住んでいる場合、長男が独断でリフォームしてしまうことはよくあります。長男は共有名義でも自分の家だという意識が強いので、過半数の同意のことなどは頭にありません。他の共有者も見過ごしてしまいがちで、表面化しにくいのですが、過半数同意がトラブルの種であることは同じです。
共有名義には、その後のリスクがありますので、できるだけ避けるのが無難です。共有名義にはリスクがあることを知っておくことで、その後のトラブルの種を事前に積んでおいた方が良いでしょう。
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