【相続】相続登記が義務化へ~所有権を得て3年以内に申請・放置は後世に多大なコスト~

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相続・終活マガジン

【相続】相続登記が義務化へ~所有権を得て3年以内に申請・放置は後世に多大なコスト~

2023/03/17

目次

    【相続登記が義務化へ】

    今から約1年後の2024年4月1日、改正不動産登記法が施行され、「相続登記の申請」が義務になりました。これまでは不動産を手に入れた人が登記を申請することは法的な義務ではありませんでした、相続登記されていない不動産が増え、真の所有者が誰なのかが分からない「所有者不明不動産」が問題化しています。相続登記が義務化されて以降は申請しなかった場合には過料が科されることもあり、申請の放置には気を付けなければならなくなりました。

     

    そもそも不動産登記とは、土地や建物について所在地や広さ、所有者の情報を法務局の登記官が専門的な見地から正しいかどうかを判断した上で記録することです。

     

    改正法の施行により、①相続により不動産の所有権を得た人は、それを知った日から3年以内に登記を申請しなければならない、②正当な理由がないにもかかわらず申請しなかった場合は、10万円以下の過料が科されることがある-ことになりました。

     

    特に今回の法改正では、施行日以前に相続が発生していたケースについても、登記の申請義務が課されることに注意が必要です。相続による所有権の取得を知った日が施行日の前であった場合、施行日から3年以内に相続登記をしなければならなくなりました。

    【土地の処分が困難に】

    所有者不明不動産によって生じ得る問題について、三つの例を挙げて説明します。

     

    一つ目は、相続した土地を売れずに困ったという例です。Aさんは最近、父を亡くし、土地を相続しました。Aさんはその土地を売れば多額のお金が得られると考え、不動産業者に売却を申し出ました。すると、不動産業者から連絡があり、「不動産登記を閲覧したら、所有者はあなたではなく、別の人でした」と言います。所有者は数十年前に亡くなったAさんの祖父と記載されていたのです。

     

    実はAさんの親族は「Aの祖父が亡くなったらその土地はAの父が相続し、父が亡くなったらAが相続する」という口約束を交わしたことはありましたが、登記をしませんでした。Aさんは不動産業者にその事情を説明しましたが、「そうおっしゃっても、我々にはAさんが真の所有者かどうか分かりませんから」として、その土地を扱うことを拒んだのです。

     

    Aさんがその土地の所有者であると第三者に証明するには、祖父の相続人であるAさんの妹、いとこ2人、おじの計4人が「その土地は確かにAが相談した」という旨を記した「遺産分割協議書」に押印し、印鑑証明書を添付して法務局に申請する必要があります。結局、Aさんは何とか4人の合意を取り付けて無事、登記を更新でき、最終的に土地を売って多額のお金を手にできました。

     

    しかし、山林など買い手が見つかりそうにない土地だった場合、相続人の誰も売ろうとは考えず、登記申請を怠るかもしれません。また、他の相続人が1人でも協力しなければ、登記申請ができません。そのような場合の対処については後述します。

     

    二つ目は、住宅の所有者が管理を怠った結果、通行人に怪我をさせてしまった例です。古い空き家の外壁が崩れ、たまたま歩いていた人に当たってしまいました。その人は「住宅の所有者が適切に維持・管理をしていれば、怪我をしないで済んだはずだ」と考え、所有者に賠償を求めることにしました。

     

    しかし、不動産登記簿に載っていた所有者は何十年も前に死亡していました。誰に損害賠償を求めていいのか分からず、途方に暮れてしまいました。司法書士などの専門家に依頼すれば、真の所有者が判明する可能性は高いですが、それなりの費用が掛かることもあります。

     

    三つ目は、傾斜地にある空地の擁壁が崩れて土砂が隣接地に流れ込み、隣家が破損したという例です。役所が調べた結果、「擁壁が崩れたのは空き地の所有者が適切な管理を怠ったからだ」という判断となった場合、所有者が損害を賠償するよう求められる可能性は高いです。

     

    このようなケースでも、真の所有者が直ちに分からなければ、探し出す必要があります。所有者が不明のままだと、被害の復旧が進まなかったり、更なる被害が発生したりと、様々な問題が起こり得ます。

    【「相続人申告登記」新設】

    一つ目の例で、Aさんの妹ら4人の意見が分かれ、問題の土地をAさんが相続することに合意しないこともあり得ます。その場合、Aさんは登記申請をしたくてもできません。そこで、24年4月施行の改正不動産登記法では、簡易的な義務履行手段として「相続人申告登記」という制度を新設しました。

     

    この制度は、不動産の所有者が亡くなって相続が発生した後、他の相続人はさておき、「私は所有者の一人である」という旨を3年以内に法務局に申し出るというものです。法務局は申し出た人は登記申請の義務を履行したものとみなします。

     

    Aさんが相続人申告登記をしても、問題の土地の所有者として登記することにはならないので、その土地を売ることは引き続き困難です。ただ、過料を科せられる心配はなくなります。

     

    これまでも共有状態をそのまま登記に反映(法定相続分での相続登記)することはできましたが、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定しなければなりませんでした。戸籍謄本を集めるなどの負担が大きかったのですが、相続人申請登記はそれに比べればはるかに簡易な手続きで済みます。

     

    また、Aさんら相続人の間でその後、遺産分割が成立した場合は、遺産分割の成立の日から3年以内に遺産分割の内容を踏まえた相続登記を申請します。遺言書がある場合も、相続人が不動産の取得を知った日からやはり3年以内に、遺言の内容を踏まえた相続登記を申請します。

     

    3年以内に相続登記をしなかった場合でも過料が科されない「正当な理由」とは、法務省資料によれば、①相続人が極めて多数にのぼり、戸籍謄本などの資料収集や他の相続人の把握に時間を要するケース、②遺言の有効性や遺産の範囲などが争われているケース、③申請義務を負う相続人に重病などの事情があるケース、これらが想定されています。

     

    最後に何世代にもわたって登記を怠ってきた場合についてみておきましょう。専門家に依頼して真の所有者を把握し、正しい登記を申請しようとすると、多くの人が想像するより多額の費用が掛かることがほとんどです。登記簿上の所有者が曽祖父とすれば、現在の相続人が10人以上いることも珍しくありません。相続人の数が増えれば増えるほど、問題の解決にコストも増えます。

     

    「過料を科されるから対処する」というのは後ろ向きの考え方ではありますが、2世代、3世代と相続の手続を放置すると、結果として多大なコストがかかってしまいます。改正法施行を契機に相続の手続はその都度、解決するように社会が変わったと考えた方が良いでしょう。

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