【相続】共有状態を離脱する3つのテクニカル その①

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相続・終活マガジン

【相続】共有状態を離脱する3つのテクニカル その①

2023/05/02

目次

    【自己持分を売れば自分の利益は確保できる】

    共有名義を解消する方法としては、次の図のように「自己の持分を売る」「他の持分を買い取る」「自己の持分を放棄する」の3つがあります。この中から状況に応じて最適な方法を選択することになります。ここでは、長男・長女・次男・次女の4人がそれぞれ4分の1の持分で共有状態になっている事例で考えてみます。

    自己の持分を売るとは、他の共有者または第三者に持分を売ることです。図では長女が第三者に自分の持分を売ることによって共有名義から離脱するケースです。ここで、共有者である長男に売れば、長男が長女から買い取ったことと同じになります。

     

    このように、相続した共有者間で話がまとまらない場合は、自己の持分だけを自由に売ることができるのです。持分を放棄する場合は、他の共有者に無償で持分を与えるだけになりますが、持分を売却すれば自分の利益を確保したうえで共有状態から離脱し、共有名義を解消することができます。

     

    なお、全員が同意するなら個別に売るのではなく、相続人の1人の単独名義にして不動産全部を売却することができます。もちろんこれがいちばん効率的です。しかし、合意が得られないときでも自分の持分だけは自分で処分できるのです。

    【自己の共有持分だけを買う第三者はたくさんいる】

    繰り返すように、共有名義の不動産の場合、単独名義と違ってさまざまな制約や使い勝手の悪さがあります。不動産全体を売ったり、建て替えをしたりするには全員の同意が必要ですし、共有者はそれぞれの事情を抱えていて主張も異なります。

     

    そんな不動産について、身内以外の第三者が、共有名義の一部だけを買ってくれるものなのでしょうか。

     

    ずばり言って、買う人はたくさんいます。買うのは、投資家や専門の買取業者です。投資家は投資に見合う利益が得られるなら積極的に買うのです。もちろん、制約の多い共有名義物件は、通常の不動産よりリスクがあるのは確かです。

     

    しかし、リスクが高い分だけ通常の不動産投資より儲かる可能性があるのです。ハイリスク・ハイリターンは投資家にとっての購買動機に十分なります。不動産に市場価値がありさえすればよいので、普通に不動産取引が行われているなら全国どこでも地域は関係ありません。

     

    例えば、相続後、兄弟2人の共有名義の実家に兄が住んでいて、弟から安く持分を買い取りたいが、売買価格で折り合わないとします。業を煮やした弟が第三者に自分の持分を売る場合、相場より安くはなるものの、兄の提示した価格より高くなれば売ります。投資家は相場より安ければ買います。

     

    投資家が弟から共有持分を買った後、兄が投資家から持分を買い取ろうとしても、投資家は買い取った価格より高くなければ売りません。兄は単独名義にすることが目的なので、結果として弟が提示した価格よりかなり高い価格で買うことになり、投資家は十分な利益を回収できるのです。

     

    また、兄が買い取らない場合、持分相当の賃料を請求して賃料によって利益を得るという方法もあります。

     

    また、兄弟3人(長男・長女・次男)が相続した実家を売ろうということでは一致しても、価格で折り合わないので長女が自分の持分を投資家に売ってしまったとします。投資家は利益を得るために長男と次男に売り出す価格を提案します。

     

    それまでは、自分の都合のいい価格しか提案してこなかった長男と次男は、相場に基づいた価格を投資家から提示されて納得します。不動産全体を売却できれば、当然、一部の共有持分より高く売れますから、三者で分配しても投資家は通常の不動産投資より多くの利益を得ることができます。

     

    このように、身内だけでは感情が先行してまとまらなかった売却価格が、第三者が入ることによって合理的な価格で合意し、初めて事態が動き出すということもあるのです。

     

    一方、投資家ではなく専門の買取業者(共有持分買い取りを専門とする不動産業者)もいます。一見、プロの買取業者のほうが高く買ってくれそうな気がしますが、実は逆です。買取業者は商売としてやっているので価格にシビアで、下手をするととんでもなく安い価格で買い叩かれてしまうことがあるので注意しなければなりません。

     

    ただ、売却を急いでいる場合は早く買い取ってもらえるというメリットはあります。急ぐ必要がなければ投資家と買取業者の提示価格を比較してから決めるとよいかもしれません。

    【他の相続人全員から持分を買い取る】

    相続人の誰かが実家に住んでいた場合に取られる共有名義解消方法がこれです。実家を売却するには共有者全員の同意が必要ですが、個別の持分の売却は共有者単独で行うことができます。実家に共有者の1人が住むなら売却の必要は当面ありませんが、共有名義の解消はしておくべきです。

     

    前述の持分を買い取る図の事例では、長男が長女から持分を買い取って自分の持分を増やしましたが、次男・次女との共有名義状態は依然として続いています。自分の持分を増やしても、共有持分が残っていれば共有名義が抱えるリスクは解決したことになりません。そのため、一度に解消できなくても次男か次女から個別に買い取りを進め、最終的には長男の単独名義にする必要があります。

    【財産をあきらめていいなら「相続放棄」か「持分放棄」で共有状態から逃れる】

    「財産はもらえなくてもいいから、とにかくもめ事から手を引きたい」というのであれば、自分の持分を放棄するという方法があります。自己持分の放棄には「相続放棄」と「持分放棄」の2つのやり方があります。

     

    相続放棄は相続開始後(死亡後と考えてよい)3カ月以内に手続きをしないとできなくなりますし、不動産以外の財産も放棄しなければなりません。これに対し、持分放棄であれば期限がないのでいつでもでき、不動産の自分の共有持分だけを放棄すれば他の財産は取得することができます。

     

    持分放棄は、他の共有者の同意は不要なので単独でできますが、登記(持分移転登記)は他の共有者と共同で行う必要があります。登記をしないままだと固定資産税を負担しなければなりません。

     

    持分放棄は贈与ではありませんが、贈与税の対象になります。そのため、贈与税の負担や持分が増えることによる固定資産税の負担増加を嫌って他の共有者が登記を拒む可能性もあります。しかし、登記を拒否された場合には登記引取請求訴訟を起こせば必ず登記が認められるので、登記できなくなるということはありません。

     

    なお、持分の取得費は持分を引き受けた共有者に引き継がれません(持分放棄時の価格が取得費となる)ので、持分を引き受けた共有者が売却するときには税金が安くなる可能性があります。

     

    例えば、持分の取得時(相続時)の価格(取得費)が300万円で、持分放棄時の価格が500万円の場合に、その後資産価格の上昇により600万円で売却できたとします。売却額600万円から取得費を差し引いた額に課税されますが、取得費は300万円ではなく500万円になるので税金が安くなります。

     

    持分放棄は贈与と似ていますが、別物です。贈与は共有者のうちの特定の人や第三者などに与えることが可能ですが、持分放棄は他の共有者全員に持分に応じて振り分けられます。持分放棄分を特定の共有者が引き受けたり、共有者以外の第三者が引き受けることはできません。

     

    持分放棄は、共有状態から離れるひとつの手段ですが、金銭的に何も得られなくなります。その点、自分の共有持分を売ることができれば金銭的見返りを得ることができますから有利になります。共有者間でもめているなら第三者に売ることもできます。そのため、特殊な場合を除いて共有名義解消の手段としてはほとんど利用されていません。

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