【相続】空き家の譲渡所得特例 3000万円控除の利点
2023/09/14
目次
【空き家の譲渡所得の特例】
空き家となった親の自宅を相続後に売却した際、得られた所得(もうけ)から3,000万円を控除できる「空き家の譲渡所得の特例」(空き家特例)があります。
2023年の税制改正で、今年末までだった特例の期限が27年末まで延長されただけなく、耐震リフォームや建物の取り壊しの要件も使い勝手が良くなりました。空き家の処分の際には、使わなければ損をする特例として覚えておきたいところです。
空き家特例の対象となるのは、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家屋です。昔に買った家は貨幣価値の違いもあり、安く買っているケースも多く、もうけが出る可能性が高くなります。また、古すぎていくらで買ったのかが分からないことも多いのですが、そうした場合には「売った金額の5%で買ったこととする」ため、もうけの金額も大きくなります。
所得税法では通常、不動産を売ってもうけが出ると、所有期間5年超なら税率20.315%、5年以下だと39.63%の税金(所得税・住民税)がかかります。仮に3,000万円のもうけが出れば、税金は税率20.315%の場合では、609万4,500円になります。
しかし、空き家特例を使えれば、もうけから3,000万円を控除できるので、もうけはゼロ、税金もゼロとなります。最大約610万円もの税金がかからず、使わなければ損です。
【耐震改修の要件好転】
ただし、こうした大型の特例には厳しい条件もあります。前述した①建築時期に加えて、②区分所有登記されている建物でないこと、③相続開始の直前まで被相続人以外に住んでいた人がいなかったこと、④相続から譲渡の時まで空き家のままであること、⑤売却代金1億円以下、⑥相続した日から3年を経過する年の12月31日まで、かつ27年末までに譲渡すること、⑦譲渡の時点で建物が耐震基準を満たすか、取り壊していることです。
ここで、今回の税制改正前後で異なるのが、⑦に関連して建物を耐震リフォームしたり取り壊したりした場合の扱いです。
改正前は特例適用の要件として「譲渡の日までに売り主が行う」こととされていましたが、2024年1月1日以降の売却については「譲渡の日~翌年2月15日までに売り主か買い主が行う」場合も含まれることになりました。空き家を流通させるには売り主の負担を軽くする必要があると国土交通省が要望したためです。
使い勝手が良くなった空き家特例ですが、もう1点気を付けておきたいのが、相続人が複数人いる場合の控除額の引き下げです。
2023年末までの譲渡なら相続人1人当たり3,000万円までの控除が可能でしたが、2024年1月以降の譲渡については相続人が3人以上の場合、控除額は1人2,000万円までとなりました。ただ、空き家が相当な金額で売れない限りは、大きな影響はないでしょう。
空き家特例を申告するには、土地・建物用の「譲渡所得の内訳書」や「登記事項証明書」「耐震基準適合証明書」などに加え、空き家であったことを示す市区町村長発行の「被相続人居住用家屋等確認書」などの書類をそろえなければなりません。
控除額が大きな特例なので、ミスがないように申告は税理士に依頼するのが安心ではありますが、自分でできないほど難しくもないと思われます。自己申告する場合は、税務署や税理士会などが開催する相談会でチェックしてもらうと良いでしょう。
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