【相続】空き家の法的対策

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相続・終活マガジン

【相続】空き家の法的対策

2023/09/26

目次

    空き家を所有し続けた場合、毎年の固定資産税などの金銭的なコストが発生することに加え、空き家を放置することによる法的な責任を負う可能性もあります。

     

    例えば、所有している空き家の屋根から瓦が落ちて通行人にケガをさせた場合、空き家の所有者は通行人に生じた損害を賠償しなければならない可能性があります。

     

    これらのリスクを負わないためにも、所有する建物を「空き家にしない」または「空き家を取得しない」ための対策を取ることが必要になります。

     

    国土交通省の「空き家所有者実態調査」(令和元年)によれば、空き家を取得した原因のうち最も多いのが相続(54.6%)であり、まずは相続を原因とする空き家取得に対する対策を取るべきです。

     

    相続を原因として、所有不動産を「空き家にしない」または「空き家を取得しない」ためには、空き家所有者に相続がまだ発生していないケースと、相続がすでに発生したケースに分けて次の対策が考えられます。

    【対策① 相続発生前に売却】

    相続発生後に相続人が不動産を処分しようとしても、他の相続人と遺産分割協議案がまとまるまでは単独で処分することはできません。

     

    相続人が多いケースでは遺産分割協議はすぐにまとまらないし、相続人が少ないケースであっても、相続人

    が遠方に居住していたりすると、協議が速やかに行えないこともあります。その結果として、遺産である不動産が空き家状態になる可能性が高くなります。

     

    相続開始後、空き家の処分までの間に時間を要する可能性があることを考えると、生前に不動産を売却するのも一つの方法です。生前に売却すれば、相続人は空き家になる不動産を相続しないで済みます。将来施設に入所したり子供と同居したりする予定があり、将来に空き家になることが見込まれる場合は、売却が選択肢に入ってきます。

     

    なお、建物所有者が重い認知症などであれば、売買契約はできませんが、症状が悪化する前に建物所有者と任意後見契約(認知状態が悪化する前にあらかじめ後見人となる者を決めておく契約)を締結して子供などが任意後見候補者になっていれば、本人が意思能力を失った場合でも子供が任意後見人として売却することが可能になります。

     

    また、任後見契約を締結していなかったとしても、成年後見の申し立てを行って子が後見人に就任すれば、後見人として売却することが可能になります。

    【対策② 国庫帰属の利用準備】

    今年4月から相続土地国庫帰属法が施行され、相続によって取得した土地は一定の条件を満たせば、国に所有権を移すことが可能となりました。ただ、この制度を利用できるのは、相続によって土地を取得した場合に限られているため、相続前には利用することはできません。また、制度上、相続後は土地を相続した人全員で申請する必要があり、遺産分割に時間がかかれば相続人はその間も制度を利用できません。

     

    この点を踏まえ、相続人が将来速やかに制度を利用できるよう、生前から準備することが考えられます。不要な土地を国庫に移すには、例えば土地上に建物がないことや、隣地との境界が明らかになっていることが必要です。そのため、建物の解体作業を進めたり、測量を行って境界を確定させるといった準備をする。その後、遺言書などで土地の所有者を一人に指定すれば、相続人が制度を利用して最終的に国庫に帰属させられます。

     

    生前から制度の利用を準備する上での注意点の一つ目が、生前に建物を解体して更地にした場合、住宅用地の固定資産税を軽減する特例が外れ、税務上の負担が増すことです。この点を踏まえると、生前準備の選択肢に入ってくるのは、もともと固定資産税が安い土地である場合か、固定資産税の増額が容認できる場合になります。

     

    二つ目は、相続土地国庫帰属制度は国への帰属が認められるための要件が複雑であり、将来的に国庫に帰属させたい土地が同制度の要件を満たすかどうかを事前に確認する必要がある点です。

     

    この確認を怠ると、準備を進めたにもかかわらず、同制度の対象外であったという結果になってしまいます。そのため、まずは弁護士などの専門家に同制度の要件を満たすかどうかの相談を行った方が良いでしょう。

    【対策③ 遺言書作成で分散を防ぐ】

    相続発生後、遺産分割をしない間にさらに相続が発生し、相続人が多数となった結果、遺産分割が一層困難になる事態がしばしば起きます。関係者が多数となり、かつ相続する持ち分が細分化されると、不動産を誰も管理しなくなり、結果として空き家となることがあります。遺産分割の成立までは相続財産は相続人全員の共有状態となり、共有者全員の合意がないと相続財産を処分できないためです。

     

    こうした事態を解消するには、遺言書を作成して不動産を取得させる相続人を指定することが重要になります。遺言書によって不動産を相続人一人に相続させれば、持ち家が細分化する事態を防ぐことができます。不動産を一人で取得した相続人は資産価値がある不動産なら自身の判断で売却できるし、そうではない場合は相続土地国庫帰属制度が使えないかを検討するなど、空き家の速やかな処分が可能になります。

    【対策④ 遺贈と相続放棄を活用】

    民法では、最終的に残った相続人のいない相続財産は国家に帰属すると定めています。そこで、遺贈と相続放棄を組み合わせることで、不要な不動産を相続財産国庫帰属制度によらずとも国庫に帰属させる方法があります。遺贈とは遺言者が遺言書によって遺言者以外の人に財産を取得させる単独の行為(相手方の承諾不要)を指し、相続人だけでなく相続人以外の人も遺贈を受けることが可能です。

     

    まず、作成する遺言書によって相続させたい遺産のみを「特定遺贈」(個別の財産を特定して遺贈すること)し、不要な空き家や土地は遺言書には記載しないことにします。相続人には将来相続が発生した時には相続放棄をしてもらうことを伝え、相続発生後には相続人に実際に相続放棄をしてもらいます。これにより、相続人は空き家など不要不動産を相続せずに済みます。一方で、遺贈により特定の遺産のみを相続することが可能になります。

     

    相続放棄によって次順位の遺言書の親や兄弟姉妹が相続権を有することになりますが、これらの人も全員が相続放棄をすると、相続人は不存在になります。ただし、相続放棄をしたからといって、自動的に国庫に帰属するわけではありません。遺贈を受けたりした人が家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、残った不要な財産を国庫に帰属させる手続きが必要で、清算人に財産を引き渡すまでは管理する責任を負います。

     

    また、相続によって取得した不動産には、原則として不動産取得税がかからず、登録免許税も軽減されたりしていますが、相続放棄により取得した不動産には税務上の負担が増加する可能性があります。

     

    そして、遺言書作成者に多額の借金などがある場合は、相続放棄の結果として借金も免れることになるため、債権者に遺贈そのものの無効を主張される可能性があります。これらのリスクがあるため、この方法を検討する場合は専門家に相談することが大切です。

    【対策⑤ 共有状態を解消し処分】

    相続によって空き家や空き家の持ち分を相続した時に、他に相続人や共有者がいると、自分一人の判断で空き家を処分することができません。そこで、他の相続人に対して遺産分割請求やほかの共有者に対して共有物分割請求を行い、共有状態を解消して単独所有とする方法があります。共有状態を解消して単独所有とすると、売却や相続土地国庫帰属制度の利用なども格段と進めやすくなります。

     

    ただし、遺産分割や共有物分割は関係者全員の合意が必要です。関係者が多数に上る場合は利害調整に時間がかかり、場合によっては裁判に移行することもあるので、弁護士などの専門家に相談した方が良いでしょう。ただし、2023年4月の改正民法では、遺産共有で相続開始から10年経過している場合、裁判所は原則として法定相続分で遺産分割を判断することになりました。また、共有者が所在不明な場合の手続きも簡素化されています。

    【対策⑥ 不要な持ち分放棄】

    空き家の所有権ではなく共有持ち分権を相続などにより取得した場合は、その共有持ち分は放棄することも可能です。共有持ち分の放棄自体は、他の持ち分放棄ができるのはほかに共有者がいる時に限られ、他の共有者すべてが共有持ち分を放棄して一人の所有権となった場合は、所有権の放棄はできないと解されています。

     

    共有持ち分放棄は他の共有者にその意思を示せばよく、特別な手続きは必要ありませんが、それだけでは不動産登記に反映されません。持ち分放棄による所有権移転登記をするには、他の共有者全員と共同での申請が必要で、他の共有者が移転登記に協力しない場合は、登記に反映させるための裁判をしなければなりません。そのため、事前に他の共有者と話し合っておくことも大切になります。

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