死因贈与と遺贈の違い
2020/12/23
目次
【お互いの合意のもとに財産を渡す死因贈与】
死後に財産を渡す手段として、相続や遺贈の他に、死因贈与という方法もあります。
死因贈与とは「自分が死んだら、息子に1000万円を贈与する」というように、生きている間に贈与者の死亡を条件に贈与契約を結ぶ方法です。
遺贈が財産を渡す側の一方的な意思であるのに対し、死因贈与は財産を渡す側とそれをもらう側の双方の合意が必要となります。
死因贈与は、遺贈や※【生前贈与】(最後に解説)のように、誰に対しても行えます。双方の合意が必要という点はあくまでも「贈与」ですが、財産を残す人が亡くなった時点で渡すため、相続税がかかります。
死因贈与のメリットは、渡す側にとっては財産を渡したい人に確実に渡すことができ、もらう側にとっても事前に何をもらえるかが分かるという点です。
デメリットは、相続人に不動産を渡す場合、税金面で不利になる点です。
遺贈であれば、第三者への遺贈と相続人への遺贈では、登録免許税と不動産取得税の税率に差があり、相続人への遺贈は優遇されています。
一方、死因贈与は、誰に対する贈与でも、同じ税率となります。
【負担付「死因贈与」の効力は負担付「遺贈」よりも強い】
例えば、財産を上げる代わりに自分が死んだら「ペットの世話をして欲しい」「妻の介護をして欲しい」「妻に生活費として、毎月10万円を渡して欲しい」というようなときに、1)【負担付遺贈】又は、2)【負担付死因贈与】の二通りの方法があります。
1)の負担付遺贈では、上げる人からの一方的な意思表示なので、もらう人はその内容を拒否する可能性もあるでしょう。
一方、2)の負担付死因贈与の場合は、生前に両者の合意のもとに契約しているので、履行される可能性は遺贈よりも高いと言えます。
例えば、前述のような「妻に毎月10万円を渡して欲しい」というような場合は、生前に契約をした上で、死んだあとに、その契約をした相手に財産が分けられることになります。
しかし、負担付遺贈の場合は、遺贈者が死んだあとで、その内容を知らされるわけですから、内容によっては財産をもらってでも、その負担を受けたくないということもあり得ます。その場合は、その負担は履行されることはない、ということです。
ただ、死因贈与の場合、遺言は必要ありませんが、双方に合意があったことを証明しなければなりません。口約束だけでなく、契約書を交わし、確定日付印を押してもらう、又は公正証書にするなどしておいた方が無難なようです。
また、被相続人の死後に、贈与された側が約束した負担を行わなかった場合や、その不履行を他の相続人が訴えたりする場合にも、契約が交わされたことを証明するために契約書が必要となります。
【遺贈と死因贈与の違い~遺贈】
<遺贈>
◎財産をもらう人の範囲◎
誰でも良い
◎課税される税金◎
相続税
◎負担付◎
負担(条件)を付けられる
◎遺留分との関係◎
遺留分の影響を受けるので、遺留分は発生する
◎双方の合意◎
必要ない。遺贈を受ける人(受遺者)の承認は必要なく、遺贈者の一方的な意思で財産を渡せる
◎財産の移転方法◎
遺贈者が遺言書に記しておく。民法に定められた遺言の方式である必要がある。
◎効力の発生時期◎
遺贈者が死亡したとき
◎撤回◎
効力が生じるまでは、遺贈する人がいつでも撤回できる。
◎相続放棄◎
できる
◎不動産登記と権利保全◎
仮登記はできない。遺贈者の死後に所有権移転登記を行う
◎登録免許税◎
相続人・・・0.4%、相続人以外・・・2%
◎不動産取得税◎
相続人・・・非課税
相続人以外・・・3%、又は4%
【遺贈と死因贈与の違い~死因贈与】
<死因贈与>
◎財産をもらう人の範囲◎
誰でも良い
◎課税される税金◎
相続税
◎負担付◎
負担(条件)を付けられる
◎遺留分との関係◎
遺留分の影響を受けるので、遺留分は発生する
◎双方の合意◎
必要あり。贈与を受ける人(受贈者)の承諾が必要。贈与者と受贈者との契約によって可能となる
◎財産の移転方法◎
贈与者と受贈者が生前に契約する。契約書の書式に決まりはない。
◎効力の発生時期◎
契約した時から権利義務が発生する。効力の発生は贈与する人が死亡した時。
◎撤回◎
撤回できる。ただし、負担付死因贈与契約の場合で、贈与を受ける人が既に負担を履行している場合は撤回できない。
◎相続放棄◎
契約のため、一方的な放棄はできない。
◎不動産登記と権利保全◎
贈与者の生前に仮登記ができるので、もらう人は自己の権利を保全できる。
◎登録免許税◎
2%(誰でも)
◎不動産取得税◎
3%、又は4%(誰でも)
【生前贈与】
生前贈与とは、その名の通り『生きている間に財産を誰かに贈る』法律行為です。贈与は基本的にいつでも、誰にでもできます。ただし、沢山のルールがあるので、注意が必要です。