「墓じまい」を考える
2021/01/20
目次
【墓じまい】
代々受け継いできた実家の墓を守ることが難しくなり、「墓じまい」をする人が増えています。家族の形態や供養に対する考え方の変化を映した動きですが、墓を移すにはかなりの費用や手間がかかります。
家族に迷惑を掛けたくないと考えるシニア層の宿題ともいえる課題です。体が動くうちに取り組んでおきたい課題でもあります。
「墓じまい」とはこれまであった墓を撤去し、更地に戻すことを言います。その際は墓から遺骨を取り出して新しい供養先に入れるので、意味は「改葬」とほぼ同じです。厚生労働省の調査では改葬件数は年々増加傾向にあり、2018年度は11万件を超え、毎年過去最多となっています。
【墓じまいの主な理由は次の三つです】
墓じまいの主な理由は次の三つです。
1.遠い
2.継ぐ人がいない
3.家族に迷惑をかけたくない
これまで墓は親から子へ、子から孫へと引き継がれてきましたが、子がいない夫婦や、おひとり様が増えています。子がいても面倒をかけたくないと考える人もいます。
「元気なうちに自分の終末期や死後について考える終活ブームが墓じまいを促した」とも言われています。自分や先祖の墓をどうするか考え、遠方の墓を撤去する人が増えたということです。
よくあるのは故郷の墓を閉じて住まいの近くに移すパターンです。墓じまいは地域間の移動を伴うものが典型です。この場合は今ある墓の自治体で改葬許可を得る必要があります。さらに墓地管理者の承諾も必要です。勝手に墓を開けたり、遺骨を持ち出したりすることはできません。
【墓じまいの流れ」
①新しい墓を決める
↓
②これまでの墓地の管理者に伝える
●市区町村に提出する「改葬許可申請書」に署名・捺印してもらう
●寺院墓地の場合、離檀料(お布施)を求められることも
●解体・撤去工事の施行会社を決める
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③墓地がある市区町村で手続き
●「改葬許可申請書」を提出。「改葬許可証」を受け取る
↓
④遺骨を新しい供養先に移す
●閉眼法要(魂抜き)をして、墓から取り出し、開眼法要(魂入れ)をして新しい墓に納める
●新しい墓の管理者に「改葬許可証」を渡す
↓
⑤これまでの墓を解体・撤去する
【まずは、新たな供養先を決めます】
まずは、新たな供養先を決めます。引っ越し先が決まりましたら、今の墓がある市区町村で「改葬許可証」を交付してもらいます。墓地は運営主体によって、寺が所有する寺院墓地、自治体の公営墓地、民間企業や公益法人などの民間霊園に分かれますが、手続きはどこでも一緒です。「改葬許可申請書」を取り寄せて必要事項を書き込み、窓口に提出します。
寺院墓地の場合は、注意が必要です。改葬許可申請書には墓の管理者の署名、捺印が必要ですが、いきなり「墓じまいしたい」と切り出すと、機嫌を損ねて、署名を渋る住職もいるという話も実際にあるようです。日ごろから顔を出し、早めに相談するのが肝要でしょう。遠くにいる場合、お墓参りに行った際に挨拶をしておくなど、お世話になっているお礼を述べておく必要があるかもしれません。
檀家をやめる際には世話になったお礼としてお布施を渡すことが多いようです。いわゆる「離檀料」で、これは各寺によって対応が異なります。目安は10万円くらいですが、求めない寺もあります。
自治体から改葬許可が下りたら、通常は「閉眼法要」(魂抜き)をして遺骨を取り出します。新しい墓に遺骨を納める際には「開眼法要」(魂入れ)をします。改葬許可証は新しい供養先の管理者に渡します。これまでの墓は解体・撤去して更地に戻し、返却します。
解体・撤去の費用は墓の立地や大きさで異なりますが、1平方メートル当たり10万円程度。全部で30万円ほどかかる場合が多いようです。最近では墓じまいの一連の作業をパッケージにして提供する専門業者も増えています。
【費用について】
一般墓
いわゆる「〇〇家の墓」。土地使用権と墓石・工事代で100万~300万円。
納骨堂
大半が屋内。ロッカー式や自動搬送式等。1~2人分で20万~100万円。
樹木葬の墓
墓石の代わりに木や草花を植えた墓地に埋葬。1人分で15万~80万円。
永代供養墓
他人と共同で入る墓。遺骨が混ざる「合葬」タイプは1人分で数万円から。
(上記内容に当てはまらない墓もありますのでご注意ください)
遺骨の新たな受け入れ先で人気なのは、管理者が決められた時間、個別供養などをする「永代供養」の墓です。継承は問わず、期間が過ぎれば合祀(ごうし)します。近年、増えている樹木葬の墓や納骨堂もこうしたシステムが主流です。通常は100万円未満で購入でき、従来型の一般墓を建てる(100万円~300万円)より安く済むことが多くなっています。