【相続】実家を平等・公平に分けるのは難しい
2023/02/28
目次
【親が亡くなると実家が相続財産になる】
不動産の相続トラブルは、ごく一般の家庭でも当たり前に起こります。相続が発生する高齢者世代の8割以上は持ち家です。親が亡くなれば、子供たちは実家の不動産を相続することになります。たとえ相続財産に不動産があっても、実家だけならそれほど問題ないと思ったら大間違いです。不動産相続トラブルは、ビルやマンション、アパートを所有しているような富裕層だけの問題ではないのです。
【不動産には分け方がいろいろある】
土地などの不動産は、相続人の持分比率が決まっているからといって、単純に持分の比率で土地を分割しても公平にはなりません。例えば、相続人3人(長男・長女・次男)が60坪の土地を3等分すれば20坪ずつになりますが、道路に面している南側の20坪は北側の奥の20坪よりも価値(土地価格)が高くなります。
また、あまり広くない土地を分割してしまうと分割前より価値が落ちてしまうおそれがあります。例えば、20坪の土地は、60坪の土地を3分割したことにより60坪の土地の3分の1以下の価値しかなくなってしまう可能性があるということです。
さらに、土地の上に建物が建っているとそもそも分けられなくなります。土地は分けられても、一体的に使用するものとしての建物を物理的に分割はできません。一般的な家であれば土地を二等分あるいは三等分すれば建物にかかってしまうことが多いでしょう。
このように、不動産である実家を平等・公平に分けるのは簡単ではありません。また実家に住む相続人と住まない相続人の利害調整も必要です。
これらを考慮して相続人全員の合意を経て分割が実現しますが、分割方法も現物分割、代償分割、換価分割という3つの方法があります。3つのうちどの方法を選択するかは個々の事情によって違ってきます。(分割せずに全員で共有という方法もある)
【不動産の評価額もいろいろある】
現金・預貯金と違って不動産の価格(評価額)の決め方がいろいろあることも、平等・公平に分けることを難しくする要因です。目安となる土地の評価額には、次の図のように5つがあります。
価値を現金に置き換えるという意味では「実勢価格(時価)」になります。これは実際に取引されている価格ですが、自分の不動産がいくらになるかは、実際に売ってみないとわかりません。近隣の相場などを参考にして査定することになりますが、複数の不動産業者に査定を依頼しても大きく異なることが珍しくありません。
不動産鑑定士に依頼して査定してもらうこともできますが、かなりの費用(数十万円)がかかってしまいます。
「地価公示価格」は、国土交通省が毎年3月に公表している評価額です。全国の約2万6000カ所の調査地点の1月1日現在の価格であり、民間の不動産取引の価格指標として利用されています。公共用地の収用価格の算定基準にもなっています。
また、地価公示価格と同様に不動産取引の価格指標とされるものに、都道府県が毎年9月に公表している「基準地価格」というのもあります。7月1日現在の土地価格です。地価公示価格と発表時期が半年ずれていることで、地価公示価格を補完する役割があります。調査地点は2万カ所以上ですが、地価公示価格の調査地点と同じ場所は1割未満です。地価公示価格、基準地価格とも国土交通省のホームページで確認できます。
【税金に関わる2つの評価額】
相続税計算に使う「路線価(相続税路線価)」は、主要道路に面した土地1㎡あたりの標準価格で、国税庁が毎年1月1日現在の評価額を7月1日に公表しています。相続税・贈与税の課税基準となり、通常、地価公示価格の約8割が目安です。路線価は、国税庁がホームページで公開している路線価図で確認できます。
「固定資産税評価額」は、固定資産評価基準(固定資産税路線価など)より算出された固定資産(土地、建物)の評価額です。これに市区町村が定めた税率を掛けて固定資産税・都市計画税などの税額が計算されます。
固定資産税評価額は地価公示価格の約7割が目安で、3年ごとに評価替えが行われます。固定資産税評価額は、毎年の納税時(4月ごろ)に送付される固定資産税課税明細書を見れば確認できます。
これら実勢価格や公的な評価額とは別に、売り主と買い主が同意すれば、どんな価格で売買してもかまいません。相続において、共有名義の実家(不動産)を共有者間で売買する場合には、身内だからという理由で安く売買することが多いでしょう。ただし、あまり極端な低価格で売買すると贈与とみなされ、贈与税が課税されるので注意が必要です
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