【相続】「管理不全」も指導・勧告対象~改正空き家対策特別措置法を知る~

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相続・終活マガジン

【相続】「管理不全」も指導・勧告対象~改正空き家対策特別措置法を知る~

2023/08/31

目次

    【改正空き家対策特別措置法】

    改正空き家対策特別対策措置法が2023年6月、参院で可決・成立し、6カ月以内に施行されることになりました。空き家を放置すれば、その空き家だけでなく地域全体にも深刻な悪影響を及ぼします。

     

    2023年6月の改正法の成立により、空き家の管理、取り壊し(除却)、活用のすべてにわたって、空き家の所有者だけでなく市区町村にとっても、これまでより積極的な対応が求められることになります。

     

    2015年に施行された空き家対策特措法では、所有者の責務として適切な管理の努力がうたわれ、①倒壊など著しく危険となる恐れ、②著しく衛生上有害となる恐れ、③著しく景観を損なっている、④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切、これら4つの状態の空き家を「特定空き家」と認定し、状態を改善するための指導、勧告、命令、代執行の手立てが整えられました。

     

    空き家対策特措法により、特定空き家の取り壊しが進むなど一定の成果はあったと考えられます。また、空き家の活用促進のため、空き家の売却・賃貸希望の情報を提供する「空き家バンク」を設置した市区町村は8割を超えました。しかし、これまでの対応は危険なものがあれば取り壊し、使える可能性のあるものは流通を手助けするといった、最低限の個別対応にとどまっていたとも考えられます。

     

     2023年6月の改正では、所有者の責務として、国・自治体の施策に協力する努力義務が追加されるとともに、特定空き家に至る前の段階である、「管理不全空き家」というカテゴリーが設けられ、より早期の対応が可能となりました。また、市区町村は「空き家等活用促進区域」という、空き家を重点的に活用するエリアを定めることによって、規則面でそのエリアの空き家を活用しやすくもしたりしました。

    【NPO、民間も活用】

    さらには、空き家の活用や管理に取り組むNPOや民間企業などを「空き家等管理活用支援法人」として指定し、市区町村のマンパワーや専門知識を補完する存在として活用できるようになりました。市区町村は従来、状態がかなり悪化した空き家に個別対応するのが精いっぱいだったとすれば、改正後はその前の段階から対処したり、地域全体としての施策を講じたりしやすくなり、空き家対策は新たなステージに入るといってもよいでしょう。

     

    管理不全空き家という新たなカテゴリーが設けられる背景には、空き家の一層の増加が見込まれる中では、周囲に著しい悪影響を及ぼす特定空き家になることを待つことなく、早期に適切な管理を促すことが重要との考え方があります。具体的には、市区町村長が放置すれば特定空き家になる恐れのある管理不全空き家に対し、まずは管理指針に即した措置を指導します。

    この管理指針は、今後国が告示します。指導しても状態が改善しない場合は、勧告することができ、勧告を受けると当該空き家の敷地に対する固定資産税の住宅用特例が解除されます。(更地並みの課税で税額は最大6倍に)。

     

    これまでは特定空き家に認定され、指導に従わず勧告になった場合に特例解除の措置が取られましたが、これからは管理不全空き家の段階で特例が解除される可能性が出てきます。

     

    管理不全空き家に該当する条件は、改正法施行までに国がガイドラインを示すことになっています。また、国が管理指針として定めることが想定される管理の方法は、①所有者が定期的に空き家の換気、通水、庭木の伐採などを行う、②自ら管理できない場合は、空き家等管理活用支援法人などに管理を委託するなどして空き家を適切に管理する、などです。

     

    改正で、管理不全空き家のカテゴリーが設けられたことは、市区町村のより積極的な対応を促す可能性があります。市区町村にとっては、特定空き家と認定する場合、将来的に代執行までを覚悟しなければならないので、認定を躊躇する場合があるという指摘は従来からありました。その意味で、特定空き家認定のハードルが必要に高くなっていた可能性があります。

     

    一方で、市区町村は特定空き家の前段階で条例に基づき指導しても、適切な管理を働きかけることのできる仕組みがなく、空き家所有者の反応が期待しにくいという悩みがありました。この点で、管理不全空き家に対する固定資産税の特例解除というペナルティーは、所有者に早期から適正管理を意識させるとともに、管理コスト増と取り壊した場合の税務負担増を考慮した上での、所有者の早期売却を促す可能性があります。

    【財産管理人の請求も可】

    しかし、売却できるのは空き家の需要がある場合で、需要がない地域は売却は難しいでしょう。その場合、所有者に取り壊しを促すため、取り壊した場合の固定資産税の増分を一定期間軽減する措置を取っている例もあります。需要がなく更地にしても持ち続けなければならないという前提では、むしろ税負担軽減というインセンティブが必要であり、こうした措置を取るケースは今後、増えていくのではないでしょうか。

     

    一方、2023年の改正では、特定空き家への措置を円滑化する措置も設けられました。その一つは災害など緊急時の代執行の創設です。これまでは特定空き家の代執行を行うためには、緊急時でも命令までを経る必要があり、迅速な対応が困難でした。

     

    もう一つは代執行費用の徴収の円滑化です。通常の代執行では行政代執行法の定める強制徴収が可能でしたが、略式代執行(所有者不明時の代執行)の場合は後に所有者が判明した場合でも、裁判所の確定判決を経ないと徴収できないという問題がありました。今後はこの場合でも強制徴収できるようになります。

     

    このほか、土地や建物の所有者不明などの場合の財産管理人(相続財産管理人、不在者財産管理人、所有者不明建物管理人、管理不全建物管理人、管理不全土地管理人)の選任請求権が、市区町村に与えられることになりました。財産管理人は民法上、利害関係人に選任請求権がありますが、市区町村がどのような場合に請求できるかが明確ではないという問題がありました。

     

    所有者不明建物管理人、管理不全建物管理人、管理不全土地管理人については、所有者不明土地問題に対応する2023年4月施行の改正民法で創設された制度であり、政府の空き家問題への取り組みは所有者不在土地対策とも軌を一にしています。

     

    改正空き家対策等特措法では様々な実務上の課題もさらに解消され、今後は新たなツールも使った各地区町村の取り組みがより一層の本気度を問われることになります。

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