家の相続
2020/12/21
目次
【住む予定のない実家を相続した場合、手放すのも選択肢】
少子高齢化。そして、人口の都心部への集中。日本に起きている現実は、家が余ってくるということです。もし、実家を相続する立場になった時、どうするかということを考えたことはあるでしょうか。
いずれ直面する問題でも、親が健在の間は結論を先延ばしにしている人がとても多いはずです。不動産は使わなくても、所有し続ける限り、固定資産税や管理責任が発生します。
いったん相続すると、相続税の問題も出てきます。「自分の実家は無くしたくない」「思い出として残しておきたい」という場合は別ですが、コスト面だけを考えれば、「手放す」のは現実的な選択肢になってきます。問題はどのように手放すか?です。
実家を手放したいと思った場合、以下の4つの方法が浮かびます。制度のことも考え併せて実現の可能性を考えてみましょう。
【近隣に無償譲渡する】
市場での流通が難しい場合、近隣への譲渡も考えられます。地元ならば管理もしやすく、敷地拡大など利用価値も相対的に高まります。ただ個人への無償譲渡は、受け取った側に贈与税が発生する場合があります。事前の話し合いが不可欠です。
贈与税については、国税庁HP参照:
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm
【国や自治体に寄付する】
売却も譲渡もできないとなると、頭に浮かぶのは寄付でしょう。ですが、不動産は現金と違って地理的な制約が大きく立ちはだかります。
東京財団政策研究所の調査(495自治体が回答)では、個人から土地の寄付を受けたことのある自治体は36%。うち77%が「年1~5件」にとどまります。
道路拡張など公共利用以外、寄付を受けてくれないと考えた方が良さそうです。
【実家以外に資産がある場合の相続放棄は注意が必要】
「実家は要らないが、現金は欲しい」という選択は原則的にできないからです。
ただ、生命保険や引き継ぎたい財産の生前贈与という選択肢は残ります。相続放棄した人は、生命保険の非課税制度を利用することはできませんが、保険金自体は受け取れます。(詳しくは税務署や税理士に確認を)
①価値のある資産を生前贈与 ⇒ |
②相続発生 ⇒ |
③手放したい資産の相続を放棄 |
<生前贈与の例> |
暦年贈与 ●受け取る側1人につき年110万円まで非課税 ●毎年同額の贈与を長期間にわたり続けると課税対象になる場合も ●相続人への贈与の場合、相続開始前3年以内の分は相続財産として扱われ、相続税の計算対象になる場合も |
相続時精算課税制度 ●一旦利用すると暦年贈与の制度は使えなくなる ●2500万円まで贈与時の税金は発生しない (超過分は税率20%の贈与税) ●相続時に贈与済みの財産を含めて相続税を計算。支払い済みの贈与税は相続税から差し引き(贈与税が相続税を上回る場合は還付) |
相続放棄による財産処分の流れ |
|
① |
相続開始 |
② |
相続放棄の申告(家庭裁判所に3ヶ月以内) |
③ |
家裁からの照会書に回答 |
④ |
家裁による受理決定 |
⑤ |
相続財産管理人の選任申し立て(報酬等の予納も) |
⑥ |
管理人による財産の処分等 |
【特定空き家に指定されると?】
2015年全面施行の空き家対策特別措置法により、自治体が「特定空き家」に指定すると、場合によっては固定資産税の大幅な引き上げや行政代執行による家屋の取り壊し費用の請求対象になります。
現行制度では相続登記に法的義務や申請期限がなく、価値の乏しい不動産の相続が先送りされる事態も生んでいます。国は一定の条件を満たせば、相続した土地の所有権を放棄できる制度の創設を検討中です。相続人は固定資産税代わりに管理料を負担する見通しです。
管理料の一括支払いも検討されており、中長期的には固定資産税を納め続けるより割安になる可能性もあります。
問題の先送りで次世代への負担を生まないためにも、実家の行く末を家族で話し合う必要があります。